「流した涙は4年後の糧に」姫野・茂野・木津選手が語る。ラグビーW杯の舞台裏や今後の目標とは?

東海ウォーカー

 南アフリカの優勝で幕を閉じたラグビーワールドカップ2019。愛知県豊田市を本拠地とするトヨタ自動車ヴェルブリッツから、ナンバーエイトの姫野和樹選手、ブロップの木津悠輔選手、スクラムハーフの茂野海人選手の3名が代表入りをした。開催国の日本代表は、日本中から声援の後押しを受けて強豪を次々と撃破。予選プールを全勝で勝ち上がり、悲願のベスト8入りを果たした。44日間にわたる激闘を終えた選手達が、ワールドカップの興奮と新たな目標について語ってくれた。

日本列島を興奮の渦に巻き込んだ「ラグビーワールドカップ2019」


日本代表の中でそれぞれが役割を果たす


― ワールドカップを経験した感想をお聞かせください。

姫野和樹選手(以下姫野)「ひと言で言うと、最高でした。選手、スタッフはもちろん、応援するファンの皆さん含め日本全体でワンチームになれたことで、目標とするベスト8に進出できたのではないかと思います。それと、個人的には地元の豊田スタジアムで試合ができたことも大きかったです。『姫野コール』が起きた時には感動しましたね。本当に忘れられない大会になりました」

― 茂野選手と木津選手はチームでどんな役割を果たしたのでしょうか?

茂野海人選手(以下茂野) 「正直言って、出場できなくてものすごく悔しかったです。ただ、勝つためにはメンバー全員が同じ方向を見ていなければいけません。すぐに気持ちを切り替えて自分には何ができるのかを常に考えて行動しました。相手チームのことを徹底的に分析して、練習の際にその動きを再現することで、質の高い練習ができるように努めました」

木津悠輔選手(以下木津)「スクラム練習の時は試合に出られない悔しさを思い切りぶつけていました。トイメン(自分と向き合う相手)の選手が、練習から緊張感のある 密度の濃いスクラムを組めるように自分の役割をまっとうしました。それが試合にも生かされて、結果が出た時は嬉しかったです。『ONE FOR ALL ALL FOR ONE』というラグビー精神の尊さを改めて感じた1か月半となりました」

姫野「目標であるベスト8に進出することができたのは、試合に出られなかった選手達の献身的なサポートがあったおかげだと思っています。試合の勝敗を分けたと言っても過言ではありません」

【写真を見る】貴重なスーツ姿で豊田スタジアムを背景に笑顔を見せる(左から)木津・姫野・茂野選手


― ワールドカップでのそれぞれのベストシーンを教えてください。

木津「アイルランドやスコットランド、南アフリカに対してスクラムでひとつひとつ勝った場面ですね。練習していたことが結果に繋がり、チームの一員として誇らしかったです」

茂野「すべての試合がよかったのですが、あえてひとつ挙げるとしたら、サモア戦で見せた田中史朗選手のタックルが感動的でした。34歳という年齢で大きな相手でもひるまずに立ち向かう姿は、同じポジションとして参考となります。田中選手を追い越せるように頑張っていきたいと思います」

姫野「南アフリカ戦で敗れた後に、チームのみんなが悔し涙を流しているところを見て、「いいチームだな」と感じました。南アフリカという世界トップの強豪に本気で勝ちにいったからこそ、自然と溢れ出たものだと思います。みんなの涙を見て、『日本はまだまだ強くなれる』と感じました」

フランス大会に向けレベルアップを目指す


― 今回のワールドカップ開幕時の年齢は茂野選手が28歳、姫野選手が25歳、木津選手が23歳でした。4年後のワールドカップでは、3選手ともチームの主力としての活躍が期待されます。

木津「もちろん、4年後のワールドカップでは試合に出たいという気持ちがあります。ですが、まずはプレーヤーとしてレベルアップすることが大切で、その先に、日本代表やワールドカップがあると思っています」

茂野「目標を持つことは大切だと思いますが、あまり先のことに目標を置きすぎると目の前のことがおろそかになってしまうので、目の前の1試合1試合を大切にしていかなければならないと思っています」

姫野「まずは自分自身が強くなること。そして、今までどおり、目の前のことをしっかりやっていきたいです。今回の大会でいろいろと課題が見つかったので、個の能力を磨いていかなければなりません」

みんなの悔し涙を見て日本はまだまだ強くなれると感じた(姫野)


― ワールドカップで見つかった課題とは何ですか?

木津「スクラムに関しては理論をしっかり理解することができました。代表で学んだスクラムに関する技術は、さらに磨いていきたいと考えています。また、代表ではパスなどの基本技術も求められました。その点はまだまだの部分が多いので、さらにレベルアップさせなければいけません」

茂野「全体的にプレーの精度をもう一段上げなければならないと痛感させられました。プレッシャーがある中でプレーの実行力を高める必要性を感じています」

姫野「細かいスキルはまだまだ足りないと実感しています。例えば、パスを出すタイミングや精度、マークをずらすパスやサポートの早さなどはもっと質を高めないといけません。ニュージーランドなど、強豪国の選手なら当たり前にやれている部分がまだできていないので、徹底的にやっていきたいですね」

― そのためには、1月から始まるトップリーグでのパフォーマンスが重要になります。

木津「ワールドカップで試合に出られなかった悔しさをトップリーグでの試合にぶつけたい。まずはトップリーグで結果を出すことが4年後に繋がると思っています。 ワールドカップの経験やそこで得たスキルを出し切りたいです」

茂野「木津と同じく試合に出られなかった悔しさをぶつけたいと思います。個人としてはグラウンドに立ち続けて、日本代表として経験したことをヴェルブリッツに還元したいですね」

姫野「ワールドカップでラグビーの魅力を知った人がたくさん見に来てくれることに期待しています。トップリーグの開幕が今から本当に楽しみです。いい試合を見せて、ラグビーの楽しさをより多くの方に伝えたいと思っています」

トップリーグで結果を出すことが4年後のワールドカップに繋がる(木津)


日本代表として経験したことをヴェルブリッツに還元したい(茂野)


― 今シーズンのヴェルブリッツの見どころや目標を教えてください。

木津「南アフリカ代表のウィリー・ルルー選手やニュージーランド代表の主将キアラン・リード選手など、世界的に有名な選手が加わります。僕自身も一緒にプレーできるのが楽しみです」

姫野「新たに就任したサイモン・クロンヘッドコーチのもとで、自分達のフィジカルに、ニュージーランドのスキルを加えた新しいラグビーをお見せできると思います。また、ヴェルブリッツを応援してくださっている方々に頂点の景色を見てもらうために、優勝を目指していきます」

茂野「僕の言いたいことはすべて姫野が言ってくれました(笑)。ワールドカップの盛り上がりをトップリーグに繋げられるよう、120%以上の力を発揮するので、ぜひスタジアムに足を運んでいただけたらと思います」

姫野「ワールドカップでの豊田の盛り上がりはすごかったです。その熱を文化として定着させるため、僕達選手はとにかくグラウンドで熱いプレーをお見せして、ラグビーの魅力を発信し続けます。ぜひ会場でお会いしましょう!」

情報提供「aispo!」

鶴哲聡

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