現在、東京都美術館で好評開催中の「コートールド美術館展 魅惑の印象派」。印象派・ポスト印象派の殿堂として知られるロンドンのコートールド美術館から、選りすぐりのコレクションが展示中だ。マネやゴッホ、ルノワールらの希少な作品が目白押し!残すところわずかな会期中に、ぜひとも観ておきたいところだ。そこで今回は、実際に展覧会を体験した印象派解説コミック「5分でわかれ!印象派」(KADOKAWA刊)の著者、須谷明さんに、独自の視点で見どころを3つ紹介してもらった。
見どころ1:クロード・モネ「花瓶」
「制作年が”1881年 着手”となっているのは、この作品自体はまだ売れていない頃に描いて、巨匠となった晩年に”商品”として売るためにサインを書き加えたからです。多少加筆はしているらしいですが。そういうことするからドガに『モネは画家じゃなくて商人』とか言われるんだぞ、ドガだけじゃなくてピサロにも言われるんだから相当だぞ、などと思いながら見ると大変楽しめます」
見どころ2:エドゥアール・マネ「アルジャントゥイユのセーヌ河岸」
「1874年頃のアルジャントゥイユは印象派的に非常に熱いところですね。この頃モネがアルジャントゥイユに住んでいて、先輩マネをはじめルノワールなど仲の良い友人がモネの家に集まり制作したそうです。この絵もそんな感じで描かれたものでしょう。ていうかモネの妻のカミーユと息子のジャンが描かれているので確実にそうです。マネはモネのことが大好きでめちゃくちゃかわいがっているんですが、それにしてもこの頃のマネはモネとその家族を描きすぎだと思います。見ていて和みますね」
見どころ3:ピエール=オーギュスト・ルノワール「アンブロワーズ・ヴォラールの肖像」
「印象派ほか近代絵画の価値をいち早く見抜き世界に知らしめたことで有名な画商ヴォラールの肖像です。ルノワール晩年のふわふわタッチがいいですね。近くにルノワールの若い頃の作品(『桟敷席』など)が展示されていたので、画風の変化を手軽に見比べることができて楽しかったです。また、セザンヌもヴォラールの肖像を描いているのですが、同じ人物を描いたとは思えないほどタッチが違うので頭に浮かべながら見るとおもしろいですよ」
見どころはほかにもたくさん!
「キービジュアルとなっているマネ晩年の傑作『フォリー=ベルジェールのバー』をはじめ、セザンヌの『カード遊びをする人々』やルノワールの『桟敷席』、ゴーガンの『ネヴァーモア』など、巨匠の良作ばかりがそろった、すごく質の良い展覧会です。本当にガチで質が良いです。印象派をちょっとかじった人であれば、『これ画集で見たやつ!!何億ドルで落札されたやつ!!』と、大興奮できます。良作が多い上、それがフロア3階分にずらっと並んでいるので、すべての作品をじっくり見ていくと疲れてしまうくらいです(なんという贅沢な疲れ…)。間に余裕をもって、休憩しながらゆっくり見るのがおすすめです。あと、名だたる傑作を肉眼で直接見られるほか、詳しい解説を聞けるところも展覧会のいいところですよね。『フォリー=ベルジェールのバー』について『ああ、マネ晩年の作品ね』という知識はあったのですが、舞台であるフォリー=ベルジェールのことはまったく知らなかったのでわかりやすく解説いただけてとてもよかったです」
会期は12月15日(土)までなので急ごう!
世界有数の研究機関コートールド美術研究所の展示施設という側面に注目し、本展覧会では“名画を読み解く”鑑賞法を提案。画家の言葉、時代背景、科学的な研究成果など様々な角度から名画との対話が楽しめる。貴重な作品が観られるのもあと少し。この機会に足を運んでみてはいかが?
■コートールド美術館展 魅惑の印象派 / 会期:開催中~12月15日(日) / 会場:東京都美術館 企画展示室 / 住所:東京都台東区上野公園8-36 / 電話:03-5777-8600 / 時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで) / 休室日:月曜日 / 夜間開室:金曜日、12月7日(土)、14日(土)は~20:00 / 観覧料:当日券一般 1600円、大学生・専門学校生 1300円、高校生 800円、65歳以上 1000円 ほか
中村竜也