梅田の“スターバックスの森”に巨大アートができるまで、地域の人が参加する店づくりに密着

東京ウォーカー(全国版)

アートピース作りに大阪の子供たちが参加し、アーティスト淀川テクニックによって巨大アートとして完成。そして、「LINKS UMEDA 2階店」に設置された「梅田みらみらの木」。


梅田に“スターバックスの森”が完成するまでの独占・密着取材 第二弾。大阪・梅田の複合商業施設「LINKS UMEDA」(大阪府大阪市)に、3店舗のスターバックスがオープンした。その中のひとつ、「LINKS UMEDA 2階店」には、世界に一つだけのオリジナルアートがある。このアートは、製作の過程で大阪の子供たちや地域の方が参加。このアートに込められた想いと、誕生までの物語を追った。

世界に一つだけの巨大なアート、作品に込めた想い


大阪産の栗の木でできたコーヒーテーブル


同店のコンセプトは、「SHINRIN-YOKU TREE」。客席のテーブルや椅子に大阪産を中心とした地域材を使用し、まるで森林浴をするように、森の息吹を感じられる内装となっている。

「梅田みらみらの木」を手掛けた、アーティスト淀川テクニック


その2Fと3Fをつなぐ階段に、スターバックスの森を象徴する世界に1つだけのオリジナルアートが設置された。川や海に流れ着いた漂流物や廃材を材料にさまざまな作品を製作するアーティスト淀川テクニックによって手掛けられた「梅田みらみらの木」だ。名前の「みらみら」には“みんな”や“未来”という意味が込められている。

河内長野市の森で間伐されたスギ・ヒノキの枝をメインに、さまざまな雑木が混じっている。素材の違いにも注目


今回の店舗について、店舗デザインを担当するスターバックス コーヒー ジャパン 中川拓真氏は「他の店舗にはないような空間を作り、お客様に驚きを届けたかった」と話す。「このアートを見ながら3Fに上がり、木の温もりのあるテーブルでコーヒーを飲んで、自然の大切さを改めて感じてもらえれば」と中川氏。さらに、「自然環境を守るために、私たち一人ひとりに何ができるかを、考えるきっかけとなる場所にしたい」と語ってくれた。「梅田みらみらの木」は、“スターバックスの森”を象徴するアートなのだ。 

大阪の子供たちもアート製作に参加!地域のみんなで作り上げた「みらみらの木」


よく見るとアートには、小さな生き物たちが配置されている。これは、大阪の子供たちが、河内長野の木の端材を使って作った「森のかけら」と呼ばれるアートピースだ。

「森のかけら」


2019年9月、河内長野市立林業総合センター 木根館(きんこんかん)で、奥河内森のかけら工作が開催された。事前の募集で集まった大阪の子供たちと、府内のスターバックスのパートナーが一緒になり、森の生き物たちを作るワークショップだ。

奥河内森のかけら工作の様子


間伐材、木の実など、「LINKS UMEDA 2階店」の家具を作る際に出た端材も使用


子供たちは一生懸命に木を選び、イメージを膨らませる。木を切ったり、穴を開けるなどの難しい部分は、パートナーや木根館のスタッフが手伝って作業を進めた。

スターバックスのパートナーと一緒に、森の生き物を作っていく


子供たちは工作に夢中。そのまなざしは、真剣そのものだ


当日は、淀川テクニックも参加。子供たちの思いやこだわりを聞きながら、「森のかけら」づくりを見守った。「(本物は)見たことないけど、イノシシ!」、「これはセミ!葉っぱがついているのがメスでこっちがオス」、「鳥と、鳥がとまるところも作ったよ」など、子供たちの自由な発想で、どんどんと森のかけらが生まれていく。足が動くなどのしかけがあるものもあり、こだわりがいっぱい詰まったアートピースが完成した。。

子供たちの話を聞く淀川テクニック


子供たちが感じた“ワクワク感”を形に


完成した子供たちの作品「森のかけら」たち


「森のかけら」たちは、淀川テクニックによって大きなアートのピースとして使用される。工作の後、「森のかけら」たちはいったん京都造形芸術大学「ULTRA FACTORY(ウルトラファクトリー)」に運ばれ、同大学の学生で構成される「淀川テクニックプロジェクト」のメンバーも協力し、 一つのアートに仕上げるために、パズルのように組み合わせて、仮組みを行った。試行錯誤をした後、店舗での組み立てとなる。仮組みされたアートの部材を店舗に運び、アートが作られる。「子供たちが、好きなものを作る時の“ワクワク感”を作品にも反映させたい」と語る淀川テクニック。

「淀川テクニックプロジェクト」のメンバーとともに、階段に足場を組み、下絵を元にアートを組み立てていく


学生たちとミーティングを重ね、意見を取り入れながらアートを作り上げて行く。現場には新たに作った鳥の姿も。カラフルな羽の部分には、使い捨てのライターやシャボン玉のストロー、結束バンドなどが使用されている。淀川テクニックは、「あえて現実の鳥には寄せず、パーツの形を優先しました。“ゴミがくっつきたがっている場所”を意識して作りました」と話す。

新たに淀川テクニックが作成した鳥。羽根などにプラスチックのかけらを使用している


鳥のベースには、スターバックスの店舗から出た段ボールも使用


アートに使われたパーツは、実際に淀川で収集された“もとはゴミだった”もの。集めたゴミをよく洗って乾かし、使いやすいように色分けして新たな命を吹き込む。淀川テクニックは、「今回は素材も手法も初めてのことだらけ。特に木材と人工物を組み合わせるのに苦労しました」と、制作の苦労を語ってくれた。

スターバックスの文化「GIFT」に潜入!パートナーにアートをお披露目


「LINKS UMEDA 2階店」で開催された“GIFT”の様子


こうして完成した「梅田みらみらの木」は、開店前の店舗で開催される“GIFT”で、パートナーたちにお披露目された。“GIFT”とはスターバックス独自の文化で、店舗づくりにかかわった各メンバーの思いを、店舗で働くパートナーたちと共有するというものだ。

はじめて「梅田みらみらの木」を見るパートナー


初めてアートを間近に見たパートナーたちは、「森の生き物たちがこんな形でアートになったんですね。鳥の声も聞こえて、まるで森の中にいるようで素敵です」、「梅田のビル群の真ん中で、森を感じられる店舗になりました。お客様にもここでゆったりと、くつろいでいただきたいですね」と笑顔で話した。

コーヒーで乾杯する、LINKS UMEDAのパートナーたち


出来上がったアートを見た中川氏は、「子供たちの好きな物があふれ出た、まるで夢の中のようなアートですね。想像力がかき立てられます」「木をふんだんに使うことで、過ごしやすい空間になったと思います。この取り組みが形になって良かった」と、想いを明かした。

スターバックスが“地元”にこだわる理由とは


アートを制作した淀川テクニックは、「この作品は、大阪らしいカラフルで元気なイメージで作りました。ビル群が立ち並ぶ梅田で、自然を表現するというところが面白かったですね」と振り返る。淀川テクニックに鑑賞のポイントを聞くと、「沢山の人たちが関わった作品です。僕はゴミを使っていた人たちも、間接的に作品に参加していると思っています。このアートに込められた記憶やストーリーを想像しながら、見てもらえるとうれしいですね」と話してくれた。

店舗に設置された作品説明からQRコードをスマートフォンなどで読み取ると、「梅田みらみらの木」ができるまでのストーリーを見ることができる

 


 


店舗デザインを担当した中川氏は、「まずは、地元の素材を使ったアートで、店舗に関心を持ってもらいたい。私たちは店舗のお客様だけではなく、地域の方々ともつながっていきたいと考えています」と語る。スターバックスはこの店舗を通じて、多くの方に大阪の自然のことを知っていただき、自然を循環させて未来へつなげていくことを、広げていきたいと考えている。

「梅田みらみらの木」


もとは廃棄物だったものが融合した、ユニークなアート「梅田みらみらの木」。自身もこの店舗に携わることで、初めて大阪に森があることを知ったという中川氏は、「このアートをいろいろな人に見てもらい、大阪の森を知ってもらうきっかけになれば」と笑顔で話した。

忙しい毎日の中で、ほっとひと息つきたい時にピッタリな“都会の森”をイメージした空間。カラフルなアートと美味しいコーヒーに癒やされるひとときで、疲れた心をリセットできそうだ。木の温もりを感じる空間で、少しだけ身近な自然のことを考えながら、明日への活力をチャージしよう。

二木繁美

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