2021年度に水の都・大阪を象徴する中之島に新しく誕生する美術館『大阪中之島美術館』。2月27日(木)にその初代館長就任の挨拶、また美術館のシンボルマーク・ロゴタイプ決定の記者発表会が行われた。
大阪中之島美術館は30年かけて作り上げてきた事業。バブル崩壊後の大阪市の財政状況などの波乱を受けながらも開館にたどり着いたという。
またこの30年で収集した美術品の数は5,700点を超え、他の美術館にも引けを取らない内容になっている。大阪市出身の画家・佐伯祐三の日本最大のコレクションや吉原治良の作品群、デザインコレクションなども国内有数のコレクションを扱っていくのだという。
そんな美術館の初代館長に就任する菅谷富夫氏は92年から大阪市立近代美術館建設準備室の学芸員として参加してきた人物。
菅谷氏は「30年の時をかけた美術館ですが、30年前の価値観で作るわけではありません」と挨拶、現在の大阪の街に合ったものを作っていきたいのだと話した。また2025年の大阪万博に触れ「大阪という街が未来を作ろうとしている、そんな時に開館する美術館として、そういう未来に貢献できるものを目指します」と宣言した。
またこの日発表されたシンボルマークについて「単にシンボルマークが出来上がったので発表するというものではなく、ヴィジュアル・アイデンティティ(VI)事業の一環として美術館を作るものになっています」と話す。
VIを構築するデザイナーを「公募型企画競争(プロポーザル方式)」によって選定した。菅谷氏は「こういった手法は手続きが複雑でハードルがあったりして、公立の美術館ではなかなか行わないのですが、デザイナーさんを大切にしたい、この活動を通して振興活性化していきたいという思いがありました」と語る。
また続けて「今度の美術館の作品群の中には『デザイン』というものもあります。絵画・彫刻に並んでデザイン作品もそういうものを含めて収集していて、今後も活動の一つにして参りたい。デザインを標榜する美術館としてシンボルマークはその重要なステップでもあります」と解説した。
またVI制作者の大西隆介氏もシンボルマーク発表にあたって登壇。今回のマークは美術館の黒い外観と中之島の頭文字「N」を採用しデザインを行ったのだという。
大西氏は「VIコンセプトは『未来に向かって変化する美術館』です。さまざまな人と交錯し未来に向かって中之島エリアを盛り上げていく大阪中之島美術館の基本方針を変化するVIによって表現しています」と語った。
また発表会では菅谷氏、大西氏の2人によるトークセッションも設けられ、大西氏が「美術館だからこうするべきという固定観念ではなく、運営・建築・デザインも含めた全体が多様な価値観が発揮できれば」と話し、2人の意見が合致した。
大阪中之島美術館は現在建設作業中、2021年6月に竣工ののち開館される予定(設計は遠藤克彦建築研究所)。
桜井賢太郎