実は北海道発! 大ヒット“漢字本”に注目

東京ウォーカー

“空気読めない”から“漢字読めない”へとKYの意味を変えた麻生首相。“有無(うむ)”を“ゆうむ”と言ってしまうなど、言い間違えの多さが何かとクローズアップされてしまう。だけどこれが結構ひとごとじゃなかったり…。そんな人々の抱くひそかな危機感がブレイクさせちゃった本が「読めそうで読めない間違いやすい漢字」(二見書房)だ。

「11月に約4000部の売り上げだったのが、注目され始めた12月の後半には一気に10倍の4万部。1月は始まってまだ半月なのに6万部以上の売上です。昨年2月の刊行以来、累計で49万部を超えました」と二見書房・営業部の小松孝平さんは笑いが止まらない。だが、ヒットの背景は麻生首相のKYっぷりだけにあるのではないという。

「始まりは、北海道の紀伊国屋書店オーロラタウン店で漢字フェアをしていただいたことです。お客さんが悔しそうな顔をして買っていたのが印象的だったそうです(笑)。その売れ行きが好調で北海道の紀伊国屋全体に広がっていきました。それを北海道新聞に取り上げてもらったんです」(小松さん)。

時は「羞恥心」やスザンヌなどの猛威が吹き荒れる“おバカブーム”の真っ只中。おバカタレントを実は笑っていられないと感じた人々の存在に手ごたえを感じ、小松さんは北海道でのヒットを資料に東京の紀伊国屋書店へ乗り込んだ。

「最初は相手にされませんでした(笑)。ですが、三省堂書店さんが全国展開をしていただき、売り上げは好調。日販やトーハンなどの取次会社からも評価が高まり、大手の書店でも大きく取り扱っていただけるようになったんです」(小松さん)。

営業の地道な努力により、11月の終わりには10万部を超えるヒットとなった。これを北海道発のヒット本として12/1に再び北海道新聞が取り上げた。ここから麻生首相のKYっぷりが周知の事実となって以降はテレビ朝日からの取材、オリコンの書籍売り上げランキングの急上昇、スポーツ新聞各紙からの取材などが相次ぎ、社会現象化した現在に至る。

では、麻生首相関連の“KY関連商品”はすべて売り上げに結びついているのだろうか?DSソフト「読めそうで読めない漢字DS」の発売元クリエイティヴ・コア(旧TDKコア)に聞いた。

「メディアからの問い合わせは相次いでいますが、売り上げにおける大きな数字上の変化は見られません。07年11月発売ということもあり、置いてもらう店頭も限られているんです。インターネット販売で動きが見られるなど、少なからず好影響はありますが…」とクリエイティヴ・コアの伊藤誠之助さん。ヒットの要因は、必ずしも総理の功績だけではないようだ。

バラク・オバマ氏のアメリカ大統領就任に関連して「オバマ演説集」(朝日出版社)が大ヒットするなど、政治的な話題がヒット商品に結びつく09年1月のベストセラー事情。わかりやすくも力強い言葉で語る大統領に対し、首相はあえて難しい言葉へのチャレンジを続ける。ヒットの裏には、好対照な姿が見え隠れしている。【東京ウォーカー/中道圭吾】

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