■DJを!?
A:つボイさんご自身はターンテーブルは回してないですけど、選曲は全部。つボイさんの選曲でダーッとやって、で、一番ケツに“金太~”のリミックス…“KINTA Ma-xim MIX”をかけたっていう(笑)。
■そ、それは(笑)! さぞかしフロアは…。
A:死ぬほど盛りあがってましたね。
■あー、それ、僕も踊りたかった!
T:ほんとは、僕は古いから、もうちょっとしゃべるDJかなと思ってたら(笑)。
■ラジオDJみたいな感じかと(笑)? いや、今のクラブDJと違って、当時のディスコDJって、しゃべってました! マイクで煽ってましたもんね。
T:煽ってた。そういうやつを本当はやりたかったけど、でも僕はマイクだけは握るから途中の曲の変わり目なんかはしゃべりながらワーッとやりながらみんなで踊ってたんですよ。
■モロ70年代後半から80年代初頭のディスコの世界だったわけですね。
T:そうなんですよ。下見に行ったよね。「今のディスコって何だろ?」ったら、箱は80年代だけどもしゃべってないんですよ(笑)。だから「このくらいの雰囲気だったらしゃべろよ」と、「そういうディスコじゃないとダメだろう」と思ったけど、とにかくライティングとかは凝って、いろんなレーザー飛ばしたり、スモーク炊いたり、パカパカストロボ炊いたりしながら、選曲もしてね、「これこれこんなやつ、こんな曲で最後はとびっきりのこれでで」って(笑)。
A:あれはすごい場面でしたね。お客さんもすごかったですね。
T:面白かったね。みんな汗だくで踊ってたよね、老いも若きも。
【北村想に2000円か3000円渡してた】
■今つボイさん「時代だ」っておっしゃってましたけど、60年代末から70年代前半の日本でニュー・ロックが出てきたり、エレックをはじめとして、URCとかベルウッドとかそういうスモール・レーベルが出てきて盛り上がった時代に、つボイさんは素晴らしいアルバムを作り…。さっきおっしゃってた「スタジオ持ちたいな」っていう感覚って、ちょっと前のインディー・バンドもみんな言ってたことなんですよね。それより先に行ってるというか、「もう宅録でいいじゃん」みたいなそういうような感覚で、ある種の革命というか、「みんな家で音楽できる」みたいな…。それを盤とかでいちいちフィジカルにしなくてもデータで売りゃあいいみたいなパターンの先駆けであり、「革命的な動きがある時代につボイノリオあり」という事実を、この2枚組CDは象徴しているのかもしれません。
T:ありがとうございます。確かに新しいことをやってますが、さっき言った“大原みどり事件”じゃないですけども(笑)、昔は大変だったんですよ。レコード出したりなんかするのは。今のほうが別にスタジオ押えなくてもいい、全部自分とこのいわゆる民生機できてしまって、それでレコード会社から出すのは大変だけど、こういうようなデータとして配信することのほうが…今のほうがうんとハードルが低いんですよ。
■ベテランの方にそういうふうに言ってもらうっていうのは心強いですね。「そうなんだ、やりゃあいいんだ」って。
T:「昔やれなかったことを今はできるんだよ」って、僕らからすると「もっと昔はエネルギー要ったよ」っていうことですよね。
■そしてこの2枚組は、ポニーキャニオンさんディストリビューションでCDとして出るっていう。
A:昔なら絶対出なかったですよ。
■この歌詞ですし…。でもこれ、ちゃんとポニーキャニオンさんチェックしてるんですかね(笑)。
T:ほんとにね、「大丈夫か!?」っていう(笑)。
■時代といえば、みんな昔よりも、さらにローカル・ヒーローを求めてると思うんですよ。パンクの後とかにアメリカからR.E.M.ってバンドが出てきて、ニューヨークとかLAとかではなくジョージア州の田舎をベースにしてビッグになっていった。僕はそういうバンドっていうのが基本的に好きで、今でもそうなんです。イギリスだったらロンドンよりもスコットランドやマンチェスターが好きとか。若い音楽ファンにも、以前よりそういう傾向を感じます。つボイさんといえば、名古屋と、あと京都とかをベースにしてきたローカル・ヒーローじゃないですか。もちろん『オールナイトニッポン』に出られていたり、東京でも活躍されていますが。
T:ある時考えたのは、東京は層が厚いから僕くらいのやつはいくらでもいるんで、きっと漏れるかもわかんないけど、もうちょっと人口が少ないとこ行くと俺みたいな人間はわりと少ないだろうと、「こっちのほうがいいかもしれないなあ」とかね。
■そういうことを言ってしまうのも、なんというか、リアルで…。そういえば、つボイさんの曲に“花のDJ稼業”もしくは“花のしゃべり屋稼業”というのがありますよね。華やかに見えるラジオDJという仕事も経済的にはいかに厳しいか歌われたもので、フリーランスの立場を貫いているからこそつらい、といった内容の歌詞もすごく好きです。とにかくすごくリアルで…、ローカル・ヒーローっぽい。
A:というか、全国でも類を見ない方ですよ(笑)。
【取材&文=伊藤英嗣】
→【9】に続く
http://news.walkerplus.com/2011/0908/20/