東日本大震災前の宮城県沿岸部を写した「みやぎの思い出写真集『海と 風と 町と』」が10月14日(金)より一般発売される。
この写真集は、津波被害を受けた地域の、被災前の風景や祭りなどの写真を集めたもの。被災地の人々を励ますことを目的に、宮城県仙台市にある広告代理店・南北社が立ち上げたプロジェクトで、「美しかったあのころの風景を、もう一度見たい」という被災者の声に応えるために制作された。
掲載されている写真は、宮城県をはじめとする沿岸部の市町村が所有するものや、プロ・アマ問わずに一般の人たちから寄せられたもの。合計で3195点の写真が集められ、提供者全員の写真約300点が選定された。
10月1日に完成した写真集は、まず、32300部を被災地の仮設住宅で暮らす人たちに無料で配布。「こんな懐かしい写真を届けてくれてありがとう」「ページをめくるごとに懐かしい家並みや景色、祭りや暮らしが鮮やかによみがえってきます」など、さまざまな声が寄せられている。
そして、10月14日より、宮城県内の主な書店、ローソン各店、および、ウェブサイトで一般販売がスタートする。当初、一般販売は10980部の予定だったが、写真集にしては値段が525円と安いこともあり、予定部数を上回る注文が予想されている。「本来収益を目的としたものではないので、増刷は考えておりませんでした。原点は『現地の声に応える』ということにありましたので、要望の声が多数寄せられるような場合には、改めて検討したいと思います。ただ、費用の大半は企業様や個人様からの協賛で捻出しているために、増刷の場合は、売価の変更なども必要となる可能性もあります」と、「みやぎの思い出写真集制作委員会」事務局の矢吹さん。
また、「写真集などでは、心の支えになどなれないかも知れません。それでもこれから時間が流れ、新しい町に復興できた時に昔の風景を懐かしくご覧いただき、そこから先を生きていくための力にしていただければと思っております」との言葉も。矢吹さんは震災以来、被災者でありながら、支援者でもありたいと常に考えて日々を過ごしているという。そんな彼らが編集した写真集には、押しつけでもなんでもない、愛する土地への純粋な思いが詰め込まれている。【東京ウォーカー】