Appleの創業者で長くCEOを務めたスティーブ・ジョブズが亡くなり、内外に衝撃が広がった。iMacやiPod、iPhoneなど次々と革新的な製品を送り出してきたAppleのファンは日本国内にも多い。さらに、ジョブズ公認の伝記も発売されて大ヒットとなっていてジョブズ人気はまだまだ続いている。そこで今回は、関西ウォーカー連載「関西ITなう。」でiPhoneのおすすめアプリなどを紹介してくれている山村和久さんに特別インタビュー。長くApple社製品と関わり、Appleファン向けインターネットラジオ「ワンボタンの声」を配信している山村さんに、Appleとの関わりなどについてお話を伺った。後編では、人気ポッドキャスト「ワンボタンの声」誕生のエピソードなど、Appleやジョブズへの思いを語ってもらった。
―人気ポッドキャストの『ワンボタンの声』を始めたのはどんなきっかけですか?
山村「毎月1回開催しているユーザー会では、Apple関連のニュースをみんなの前で読んでいました。でも、ついついニュースを調べるのをサボってしまって、参加者からツッコミが入ったりするんですね。そこで、自分の中でニュースをこまめにチェックするモチベーションを高めようと思って始めたのが『ワンボタンの声』です。
ポッドキャストを使って開始したのが2007年4月のこと。2007年はTwitterやUSTREAMが始まり、アメリカでiPhoneが発売され、偶然にも日本では『ワンボタンの声』が始まりました。いまにつながるものがみんな始まった画期的な年だったんです(笑)。
でも、だれも聞いていないみたいなのでやめ得ようかなと思ったこともありました。『Appleからこんな製品が出ました』と読むだけで、おもしろくも何ともなく、しかも詰まりまくっていたので、聞いてもおもしろくなかったでしょうね。実際1カ月ぐらいやめていたのですが、再開して視聴者の声を読むようにしたら人気が出て、みなさんからもコメントがもらえるようになりました。100回を超えたあたりから、聴いている人のコメントを入れ、松尾さんのトークが少し弾けて盛り上がりを出すようになって、おもしろくなったといわれるようになりました。
最初は週2回でしたが、途中で大阪電気通信大学教授の魚井宏高先生の特番が入るようになり、週3回になりました。今は火・木・土曜日の朝に配信しています。今年で5年目を迎え、iTunesのPodcastではだいたい40~50位に入っています。USTREAMでの番組配信は2009年からスタートして、屋外のイベントなども配信するようになりました。希望としては『ワンボタンの声』をAMラジオで流せるようになれば。それで、スポンサーが付いて、枠を作って本もののプロの現場にも出せるようになればいいな、と考えています」
―山村さんにとって、Apple、Macはどんな存在だったのでしょうか?
山村「Apple製品というのは人の縁を作ってくれる機械だと思います。例えば、Appleのことならパソコンのことで知らない人とでも会話できます。実際、私も駅でiPadを使っていたら知らないおじさんに『それiPadやろ!』と声をかけられたことも。そうやって気軽にお互い持っているものが会話のきっかけになるのがApple製品だと思います。
そういったものを作り上げたスティーブ・ジョブズはすごい人、といってもなかなか人には伝わりにくいと思いますが、若者のいたずら心のようなものから会社を興し、みんなをあっと言わせるようなものを作ろうとしました。そういうフロンディア精神のようなものはいつの時代にもありますが、それを伝説にまで高め、自分で体現したのはスゴイと思います。彼の晩年を目標にするのは難しいかもしれませんが、ジョブズの若いころを目標に、いまの若い人がまねをするのはいいことだと思います。そういう意味で目標になる人物ですね。
私自身はジョブズと会ったことはないのですが、ユーザー会で知り合って友達になった人が同じグループの女性と結婚して、東京のMacに縁深い会社に転職、彼らが2002年、東京ビッグサイトで行われたMacワールドEXPOでベビーカーに赤ちゃんを乗せて歩いていると、たまたま前からジョブズが歩いてきて、赤ちゃんに「ハ~イ!」と手を振ってくれたそう。私はたまたまその場に居合わせなくて、悔しい思いをしました。
残念なことに先日ジョブズが亡くなりましたが、彼がいなくてもジョブズならどう判断するか、ジョブズならこう行動するだろう、といった彼の遺伝子のようなものを受け継ぐ人はAppleにはたくさんいるはずです。アップルが好きでAppleに入社した人がほとんどだろうし、そうした人はジョブズの考え方をつぶさに見ているはずだから、彼の考え方を共有しているでしょう。ジョブズテイストはきっと、これからも受け継がれていくと信じています」
(本インタビューは2011年11/1発売の関西ウォーカー22号の取材をもとに再構成したものです)
【取材・文=鳴川和代】
※前編はコチラ!URL:http://news.walkerplus.com/2011/1101/21/