映像で「踊る大捜査線」シリーズなどでおなじみの筧利夫は、舞台でもつかこうへい作品など、一筋縄ではいかない舞台に欠かせない実力派俳優。ものすごいスピードで長セリフをしゃべりまくり、そのセリフが観客にしっかり伝わる滑舌のよさ。舞台上を疾走する身体のキレの良さ。俳優生活30年を超えても、この体力とエネルギーを維持し続ける筧利夫。80年代をけん引した小劇場界の代表劇団だった第三舞台に85年に参加、以来、鴻上尚史が作・演出する舞台で活躍した。今回10年の封印を解き、復活そして解散する第三舞台の最後の作品「深呼吸する惑星」、その稽古の真っただ中にプロモーションのため来阪。これまでの第三舞台、そして今の第三舞台へ。筧の熱い想いに迫る!
Q:第三舞台が20周年の時、鴻上さんが10年の封印宣言をしましたよね。そして復活、それから解散へ。それぞれ言われた時はどう思いましたか?
封印宣言当時、鴻上さんは第三舞台とは別のKOKAMI@networkも主宰してたし、イギリスへも行ったり、いったん封印するのは一時休団のようなものなんだろうなと思いました。復活のことは2年前ぐらいに話が来て。そうか、やるのかと思って。解散は今年になってから聞きました。そういう結論になるんだろうなと、潔くていいなぁと思いました。10年間やって来てないので、復活したって言うことは、じゃあそのあともやるのかっていう話が出てくるわけで。そうしたときに解散するということで、より大きなお祭にするっていう決断は、僕は非常に正しいと思いました。
Q:昔の第三舞台はどうでしたか?
そりゃあ厳しかったですよ。芝居の基礎の基礎は第三舞台で培ってきたんだと思います。稽古は夏でもエアコンかけずに、外に音が漏れるからって窓も全部締め切った状態で通し稽古とかやって。ほとんど酸欠のような状態でやってた。そういう経験があるから、今、他でもやっちゃうんだよね、夏場の稽古でエアコンかけないっていうの。他のヤツはまいってるよね、頼むからかけてくれって言うもん。音響の機械も壊れるからって。実際に壊れたこともあるしね。特に「朝日のような夕日をつれて」は5人だけで2時間出ずっぱりという、ものすごくキツイ芝居。ボクの芝居は「朝日~」が基本になってるかもしれない。芝居の走っていく感じが。今回はいろいろ分担があるのでそういうわけでもないけど、やっぱり「朝日~」が代表作だな、ボクの中ではね。
Q:今回の第三舞台の魅力は?
踊りが揃ってることです。すんごい揃ってて、カッコイイっすよ。昔のまんまです。振付は今の新しいポップな感じになってるんですけど、50歳の人が踊るような内容じゃないね。もう、すごい。しかも久々にやってるのに、客観的に見て本当によく揃ってる、ビシッと。これは僕がよそでやって良くわかったんだけど、普通あんなに揃わないよ。今の方がすごいかもしれない。昔より余計な力が入ってないのかも。昔の方が若い分、カッコヨク見せようとか、余計な色気が入ってた。今の方が純粋に動きとして素敵なものを届けようと言う気持ちの方が勝ってると思うね。みんなが舞台演劇として、お客さんに見せるものとして、キープしなければいけない部分とか、守らなきゃいけないもの、バトンタッチの仕方を非常によくわかっている。デブになってる人もいないしね(笑)。今回の芝居はSFで、過去の鴻上さんの作品に比べれば、内容は分かりやすいと思います。
Q:他のメンバーとはいかがですか?
第三舞台の女優陣とやるのは19年ぶりなんですが、一緒に芝居をやる感覚は数日間で戻りました。みんな非常に和気あいあいとやってますよ。特にボクと(高橋)一生くん以外は、早稲田大学の先輩後輩の間柄の頃からやってるんで。あんな稽古場の雰囲気、前はなかったな。みんな大人になった。
Q:長年のファンは泣くかも。
あ~、泣く泣く、多分オープニングから泣くと思う。ここ泣くだろうなぁって思いながら稽古してるから。途中でも、もう曲聞いただけで泣くようなところが何か所もある。ストーリーというより、エッセンスで泣くところが多いと思うよ。曲も、そのまま古いのを使うのではなく、今の曲なんだけど、そういうのを感じるようになっているので。あ~、これいいよねって思う。2時間観終わったあと、ファンの人は若返るかもしれないね。シワが消えてるかもしれない(笑)。ボクも稽古始まって3週間ぐらい経つけど、前より若くなってるって言われる。要するに余計なことを気にしなくていいから。お芝居の演出は全部、鴻上さんに任せておけばいいし、周りの人たちも第三舞台をよく知ってる人たちばかりだから任せてやれるし、自分のことだけ考えてやればいいので。
Q:関西のみなさんにメッセージを。
人間同士が集まって、場所と機材があればこんなに素晴らしい幸せな空間が出来るんだよというのを味わいに来ていただきたいですね。
Q:30年来のファンへは?
この10年間はあなたにとって無駄な10年ではなかったということを確認しに来ていただきたいですね。ボクも半分ファンのような気持ちで参加してます。稽古してて、これは本当におもしろいものになるな、と思いながらやってますから。
※本インタビューは関西ウォーカー2011年24号(12/6発売)掲載のインタビュー記事を再構成したロングバージョンです。
(インタビュー/演劇ライター はーこ)