毎年京都の夜を彩る「京都・嵐山花灯路」が、ことしも12/9から始まった。その開幕と京都を舞台にした映画『源氏物語 千年の謎』の公開を記念し、開会式で「『源氏物語』スペシャルトーク」が開催された。門川大作京都市長と映画の製作総指揮を務めた角川グループホールディングスの角川歴彦会長、映画で一条天皇の中宮彰子役を演じる女優の蓮佛美沙子さんが登場、玉置編集長がコーディネーターを務め、源氏物語と京都の魅力を語った。
(前編のURL:http://news.walkerplus.com/2011/1216/23/)
源氏物語は日本の千夜一夜物語
玉置 蓮佛さんの役は、東山紀之さん扮する藤原道長がお父さんですね。
蓮佛 すばらしいお父さんでした。彰子の出産後のシーンで鼻をつままれる芝居がありますが、そういう些細なことで父子の愛を演じられるのはいいなと思いました。
角川 僕は源氏物語は日本の千夜一夜物語だと思った。中宮彰子は一条天皇の2番目の女性です。正妻には清少納言が付いて枕草子を書いている。それに負けず、娘に帝を引きつけておくために、道長は紫式部に源氏物語を書かせたのだと思うわけです。
玉置 源氏物語はエンタテインメントですが、同時に政治をも動かす力があったということですね。この嵐山も舞台の一つになっていますが、蓮佛さん、京都にはよく来られていたのですか?
蓮佛 小学校の修学旅行で来たぐらいでした。昨年の撮影時はちょうど紅葉の季節で、空き時間に、ホテルから自転車で嵐山に来て和菓子を食べて帰りました。紅葉の美しさもさることながら、人が優しく親切で、とても大好きな場所になりました。
角川 かつて長谷川一夫さんや市川雷蔵さんが源氏物語の主役を務めたころと違い、今回は映画界から見てもリスキーだといわれていましたが、実際に撮ってみると京都は美術、衣装、すばらしい調度品など多岐にわたってインフラが整っています。そういった点でも最初から京都で撮影することがぶれなくてよかったと思いました。
伝統文化と精神文化の融合
門川 京都はかつて東洋のハリウッドと呼ばれた日本映画発祥の地。その背景には伝統産業と物づくりの歴史が息づいています。もう一つは物語を作る精神文化。千年前の源氏物語から能狂言をはじめあらゆる文化がつながっています。精神文化と物質文化が見事に融合し、山紫水明の自然、さらにそのバックボーンに宗教がある。こういう条件が映画作りの土台。これを残しつなぐことで、京都ですばらしい映画ができます。『源氏物語 千年の謎』では、それを再認識しました。
玉置 平安時代から東山、安土桃山とすばらしい文化が受け継がれ、さらに現在も京都アニメーションや京都マンガミュージアムに代表されるマンガの文化があります。京都は千年の昔からコンテンツ産業が栄えた街といえるでしょうか。
門川 日本映画や時代劇とともに、アニメなどもがんばっていきたいですね。
角川 今夜の月はすばらしい月ですが、この月は源氏物語の冒頭、紫式部が石山寺で物語を書いているところで登場する月と同じ月です。そして紫式部が道長の元を去った夜、道長が寂しそうな顔で「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」と詠んだときの月です。この月がその二つのシーンと同じ月だと感じてください。
蓮佛 映像はまるで絵画のような美しさですが、その中で光源氏や紫式部が生々しく息づき、人間の嫉妬や思いも鮮明に描かれた映画です。ぜひ劇場に足を運んで二度三度、五度と見ていただけたらうれしく思います。
門川 映画では影のようにしか見えない御簾の奥の人も見事に衣装を着ています。そこまでこだわった映画なのでぜひご覧ください。そして次代にすばらしい京都の映画文化を伝えていきたい。角川歴彦会長、本当にありがとうございました。
(前編に戻る:http://news.walkerplus.com/2011/1216/23/)
※このスペシャルトークは2011年12/9「京都・嵐山花灯路」開会式にて開催されたものを再構成したものです。
なお、このスペシャルトークはUSTREAM「関西ウォーカーTV」でも配信されました。
アーカイブ動画URL:http://www.ustream.tv/recorded/19023499