【林 信行さんロングインタビュー】2012年、魔法の時代がやってくる!~ITが拓く未来~(その2)

関西ウォーカー

ソーシャルメディアが発展し、スマートフォンをはじめとする新たなデバイスが広く普及した現在、ITの世界は岐路に立っているといえる。これから先、私たちとITの関係はどう変化していくのだろうか。長年ITやソーシャルメディアなど、次代の最先端の取材を続けてきたITジャーナリストの林信行さんに、2012年の動向を聞いた。

「注目のソーシャルメディアは?」

—新しいソーシャルサービスもいろいろと登場し、話題を呼んでいますね。

林 昨年スタートした「Google+」はサークルを使って絞り込みができるソーシャルメディアです。「先週の飲み会にいついつまでいたメンバーのサークル」といったように絞り込むほどアツイサークルになります。作っては捨て、作っては捨て、ものによっては残るものがあるというぐらいの感じがいいと思います。

「Linked in」は昨年日本語化されて話題になりましたが、僕自身はずっと前から使っています。これはキーワードを入れるとバイオグラフィーを検索してくれるもので、仕事のネットワークを広げていくものです。日本語ではまだまだこれからですね。

そうした中、変化球的なソーシャルメディアも登場しています。たとえば、日本発のものであれば「Sumally」。これはおしゃれで洗練されたファッションアイテムや洗練された雑貨、本、インテリアなど、自分の好きなアイテムをそろえていくもの。

まず最初にエッジの効いた感度の高い人を集め、そうした人が選ぶインテリアやグッズなどをそろえて、彼らの世界観はこういったものかと思わせます。アイテムには「Have」と「Want」のチェックが付けられる。iTunesのプレイリスト的にものをそろえて、ことばのコミュニケーションではなく、もっとクールなアイテムだけのコミュニケーションを目指すソーシャルメディアです。

同じく日本発の「miil」は飲食業に携わる人が開発したもので、Instagramの食事版的印象。日本人ほど食事の写真を撮る人種はおらず、カメラにも食事モードがあるぐらいです。でもTwitterやInstagramではせっかくのおいしい料理の写真を投稿して、その場で盛り上がっても30分後には誰も覚えていません。

「miil」は位置情報を使って現在地から500メートル、1キロ、3キロといった範囲で、ユーザーがそれまでに投稿して来た食べ物写真を見ることができます。そうして見つけた写真にタグ付けされている飲食店の情報を引き出し、電話をしたり、地図で見たりすることもできます。これは一度、食べてみたいという写真があれば「食べたい」ボタンを押して記録し、後から見返すこともできます。このアプリは飲食産業の活性化にもなり、今後、海外にも広がってくれそうで、大きく期待しています。

—スマートフォンの普及もソーシャルメディアの拡大に一役買っていると思いますが、ことしのデバイスの動向などをどうご覧になりますか?

林 ことしはいよいよスマートフォンが家のデバイスとつながるようになる大きなフェーズではないかと考えています。すでにいまのiPhoneやiPadは無線LANを経由してApple TVにつながっていて、いま見ている映画を途中から自宅のテレビで見られるエアプレイという機能があります。AppleTVでイベント会場のプロジェクターにスライドを送れるようになれば、ケーブルレスでプレゼンが可能になります。これも画期的なことです。

さらにiPhoneはさまざまなものとつながれるようになっています。たとえば、いま、福島優先で製造されているのが放射線測定器のRDTXpro。これは測定結果を地図に落とし込み、iPhoneで見ることもできるようになっています。そのほか、車との連携が始まったり、血圧計につながったり、自宅のテレビのリモコンにつながり、外からコントロールできるようになったりとさまざまなことが実現しはじめています。

アメリカに骨伝導のヘッドセットなどを扱うJawBoneという会社があります。同社の新製品「UP」はゴムのブレスレット状のアクセサリーですが、モーションセンサーを内蔵、歩数を測定したり、睡眠時には寝返りを感知して一番眠りの浅いときに心地よく起こしてくれたり、iPhoneアプリと連携してそれらのログや食事などのライフログを記録することができます。アメリカでは発売1週間で20万台を売り上げ、すでに売り切れ状態。日本では今春トリニティ(株)というディストリビューターから発売予定です。

(その3に続く)

http://news.walkerplus.com/2012/0104/10/

【取材・文=鳴川和代】

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