3Dや派手なアクション、豪華なセットや大掛かりなロケといった超大作ではないけれど、観終えた後に、心にそっと、だけどしっかりと何かが残る。1月28日(土)に全国公開(北海道は1月21日~)される映画『しあわせのパン』もそんな映画の一つ。原田知世、大泉洋が営む北海道のパンカフェ「マーニ」を舞台に、そこに訪れるさまざまな人たちの心模様や幸せの形を描く同作。個性豊かな“お客さん”の一人、カオリ役を演じた女優・森カンナに作品の魅力や幸せの形について聞いた。
物語の舞台は、北海道・洞爺湖のほとりにある小さな町・月浦。どこまでも続く緑の草原、紺碧の湖、一面を埋め尽くす真っ白な雪。撮影はオール北海道ロケで行われた。「北海道には初めて行きました。映画のスチールそのまんまのすごく素敵な場所でしたね。東京みたいにお店が立ち並んでいて50m歩けばすぐにコンビニというような所ではなく、必要最低限のお店しかなくて。撮影のスケジュールは大変だったんですが、撮影現場の空気もせかせかしてなくて、どこか和やかでした」。
宿泊設備を備えたオーベルジュ式のパンカフェ「マーニ」を営む夫婦と、その店を訪れるお客さんたち。作品では、彼らの姿を通して本当の“幸せ”とは何かを問い掛ける。「東京のような都会にいると、物があり過ぎて、なんでも“ほしい、ほしい病”みたいになる気がして。でも、この映画を見ると“自分の周りには物があふれ返り過ぎていたんだな”とか“素朴でもいいんだな”ってことに気付かされると思います」。
演じるのは、沖縄旅行をすっぽかされ、北海道を訪れた傷心のOL・カオリ。役作りは、長編映画初監督となる三島有紀子監督とのやり取りの中で自然とできていったという。「自分と似ていたり、演じやすかったりという役ではなかったのですが、監督の言葉がすっと入ってきて自然と演じることができました。女性の監督は初めてではないんです。でも、三島監督は脚本も書かれていたので、監督の中に絵ができているというか、明確だったんですよ、言葉が。すごく分かりやすかったです」。
主演は2012年にデビュー30周年を迎える原田知世と、北海道出身でTV・映画と活躍中の大泉洋。二人とも共演は初めてだが、思い描いていたとおりの印象だったという。「原田さんは天使みたいな人! 周りをハッピーにしてくれるベールみたいなものに包まれているような(笑)。すごく優しくて素敵な女優さんだなって尊敬しています。大泉さんはイメージそのまんま。待ち時間もすごく面白くて。でも、今回の作品では普段見ているより柔らかい感じがしましたね」。
そんな二人が営む「マーニ」は、人生に迷った人々、ちょっとひと息つきたい人々の心の拠り所とも言える場所。自身にとってマーニのような“拠り所”は家族、そして友達だ。「実家暮らしなので、一番は家族ですね。相談はあまりしないですけれど、家族と話していると、悩みを忘れることができるんです。あとはやっぱり友達。吉高(由里子)とか、スタイリストの友達とか、友達はなくてはならない存在。食べることが好きなので、ネットでおいしい店を調べてみんなでよく女子会を開いています」。
ちなみに「マーニ」のような“カフェ”にも友達とよく立ち寄るとか。「カフェ、好きです。友達や、ふらっと一人で行ったりもします。パンももちろん好きですよ。これ、嫌いって言ったらあかん質問ですよね(笑)。クリームパンとかクロワッサンとか。私、背が高くて、サバサバ系とか思われるんですけど、甘いパンが好きなんですよ。一応、女の子なんです(笑)」。
女優業を始めて4年。女優として「まだまだ」と笑うが、いつかは「マーニ」での暮らしのように、“好きな場所で、好きな人と、好きなことをして暮らす”生活も悪くはないとか。「そうですね~。お寺とか好きなので、昔住んでいた京都なんかで、将来はゆっくりと暮らしたい。そのころもきっとお仕事はしていると思うんですけど。年齢を重ねたらそういう暮らしもいいですね。一緒にいる好きな人ですか? そのころは旦那さんでしょうね。うん、旦那さんだったらいいな(笑)」。
●森カンナ プロフィール
モリ・カンナ=1988年6月22日生まれ、富山県出身。2007年から「non・no」「mina」など女性ファッション誌でモデルとして活躍。2008年公開の『うた魂♪』で女優デビュー。2009年「仮面ライダー ディケイド」(EX)の劇場版3作のほか、テレビドラマ「インディゴの夜」(2010年、CX系)、「警視庁失踪人捜査課(2010年、EX系)、「宇宙犬作戦」(2010年、TX系)、「失恋保険~告らせ屋~」(2011年、NTV系)、「謎解きはディナーのあとで」(2011年、CX系)など出演作多数。