アーティストや評論家など名だたるメンバーが集結! 「おおさかカンヴァス」見学ツアー&座談会 ③

関西ウォーカー

おおさかカンヴァス座談会③

●名村造船所跡地へ寄り道

「床書キ原寸」/北加賀屋エリア/作者:後藤靖香

小宇宙から浮き世へ引き戻され、次に向かったのは名村造船所跡地。ここは現在、クリエイティブセンター大阪(CCO)といって、イベントスペースやライブハウスとして再利用されていて、様々なジャンルのカルチャーの発信源ともなっている。

ここでは『床書キ原寸』という名の平面作品が展示されていたのだが、展示期間はすでに終了していて、作品だったその空間はもとのだだっぴろい製図室に戻っていた。造船所時代に製図を行うために使われていた空間である。

深緑色をした床には、造船所を経て、ここが橋を設計する会社に使用されていた時代に残された、実寸大の手書きの設計図が残っていた。薄く、丁寧に引かれた線が広い床のあちこちに見える。

ここで最後に設計されたのは、今もどこかに架かっているであろう「橋」だったそうだ。詳細を知る資料は残念ながら残っていないそうだ。

パソコンでのCADが主流の現在では、こういう時間と労力のかかる作業というものはとってもわりに合わないということになるのだろうけど、それでもやっぱり「手」の感触があるものはいいなと思う。人の手で丁寧に作られたものには、何というか、愛着が沸く。

個人的にここへはよく遊びにくるのだけど、初めてライブハウスとなっている建物の裏側まで案内してもらった。ここで人々を熱狂させてきたアーティスト、ミュージシャン、そのほか著名人のサインが、バックヤードの壁にビッシリと記されていた。なかには、橋下市長が府知事時代のサインもあった。

ここのところ大阪で強化されている「風営法違反」の取り締まりはもちろんここにも及んでいて、現在では当然のことながら深夜12時以降は開放できないという状況だそうだ。

「法律とはいえ、このままだとどんどんカルチャーが衰退してしまうねんけどね。そういうことを、わかってるんかな」

こちらのプロデューサーがぽつりともらした言葉を聞いた。

条理で固めようとすればするほど、それと同じだけ、もしくはそれ以上の不条理が生まれ出てくるものなのに。法律だか何だか、つまらないことをしないでほしい、と私も思う。

ここで遊んだ夜は、どれもとっても刺激的でこの上なく楽しかったのだから。

以下④に続く

http://news.walkerplus.com/2012/0125/20/

【取材・文=三好千夏】

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