鬼才・園子温監督が、人気漫画「ヒミズ」を映画化! 迫真の演技を見せた染谷将太に迫る!

関西ウォーカー

鬼才・園子温監督が、古谷実原作の人気漫画を映画化した「ヒミズ」。衝動的に父親を殺してしまった少年・住田と彼を救おうとする少女・茶沢の悲惨な青春が描かれる。住田役で狂気にも似た迫真の演技を見せ、ヴェネチア国際映画祭の最優秀新人俳優賞に輝いた染谷将太。そんな彼が熱演の裏に隠された、意外なエピソードをたっぷりと語ってくれた。

─住田役はオーディションで決まったそうですが、この作品のどんなところに惹かれたんですか?

「まず一番大きかったのが、園子温監督の作品ということですね。園監督とお仕事をしてみたかったんです。ちょうど園監督の『冷たい熱帯魚』の試写へ行った帰りに“園監督の新作のオーディションがある”という電話があって、断る理由なんてないので“ぜひ!”と。でも、オーディションはすごく緊張しましたけどね(笑)」

─監督と初めてお会いした時の印象は?

「園監督はしゃべらないで、ずっと下を見ているんです。目も合わせてくれないから“オレに興味がないのかな?”なんて思って、ちょっと怖いなって。園監督の過去作の話になった時に、やっと数言しゃべってくれて。それでもどういう方なのかいまいちわからないまま、オーディションは終わってしまったんです。いつもはオーディションで、監督とお会いすると、どういうふうに自分のことを思っているのかなんとなくわかるんです。でも、今回は全然わからなくて…なので、決まった時は驚いたしうれしかったですが、不安もありました。この作品に出ている自分が想像できなかったし、この現場で自分はどうなっていくんだろうって」

──実際に手ごたえを感じたのは現場に入ってからですか?

「リハーサルをやっていく課程で、なんとなく役がつかめるようになりました。住田のセリフに対して、僕も間違ったことは言っていないと思いながら演じていたので、違和感もありませんでした。言っていることも理解できましたけど、自分は住田みたいにあそこまでは怒鳴ったりすることはないですけど(笑)。でも、無理をしている感じはなかったです」

─ヒロインの茶沢役の二階堂ふみさんとは叩き合ったりと、かなり激しいシーンがありますが、心が痛くなることはありませんでしたか?(笑)

「女の子を叩くなんてなかなかできない経験ですからね…でも、やっている時は罪悪感とかまったくなかったです。相手も本気でくるので、こっちも本気でムカついて向かっていった感じですね(笑)。本当に茶沢に対して、怒っていたと思います。以前に1度、ふみちゃんと共演させていただいたんですが、時間も空いているせいか “はじめまして”な勢いで僕のところに来たんです。だから、僕も最初からふみちゃんを茶沢として見られたんですよね。現場でも園監督と僕でふみちゃんにちょっかいを出せば、ふみちゃんはふみちゃんで僕をイラつかせようとしてくるんです。住田にとって、茶沢はムカつく存在なので僕もふみちゃんにムカついていて、それを隠さずに前面に出していこうと思いました(笑)」

─感情が一番沸点に達したシーンは?

「でんでんさんと村上淳さん演じるヤクザが家にやってきて、住田が怒鳴るシーンですね。最初、演じた時に園さんに“もっとやれ、ムラジュン(村上淳)をビビらせろ!”と言われて、その言葉にのせられてやってやろうっていう気持ちに僕もなって。自分の言いやすいようにセリフを変えてもいいし、言いたいことを言っていいと監督がおっしゃってくれたので、思ったことを僕は言ったんですよ。でも、その時に僕があまりにも怒鳴りすぎたので、園さんにカットをかけられて“なに言ってるのかわかんねぇよ!”って言われたことがありました(笑)」

─それだけ気持ちが役に入り込んでいたんですね。

「現場のみなさんのおかげです。園さんも周りの役者さんも盛り上げてくれたおかげで、あまり意識しなくてもあそこまで感情を爆発させることができたんだと思います」

─この作品で二階堂さんと共に、ヴェネチア国際映画祭の最優秀新人俳優賞に輝きましたがこれから映画を観られる方から、どんな声を期待していますか?

「ヴェネチアで観てくださった方は笑顔で拍手をしてくれて、それが僕はものすごくうれしかったんです。希望に満ちたラストですし、観てくれた人の活力剤にこの映画がなってくれればいいなと思います」

─「ヒミズ」を経て、次のステップにつなげていきたいことは?

「この作品のおかげで前よりも自由になれました。セリフや台本とか、カタチにとらわれて演技をすることがなくなったというか…。それだけじゃないんだってことを実感できましたし、もっと自分らしくやっていきたいですね」

【取材・文=リワークス】

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