若い女性の間で、戦国武将が活躍した場所を訪れる「史跡探訪」のニーズが高まっている!? ブームの実態を探りに、記者は戦国系ショップ「もののふ 天守」が主催する“戦国バスツアー”に潜入することに成功した。
今回のツアーは人気小説「のぼうの城」(和田竜、小学館)の舞台となった埼玉県行田市にある忍(おし)城周辺を訪ねるもの。豊臣秀吉の小田原攻めの際に、石田三成が攻略できなかったことで有名な“知る人ぞ知る”武将・成田氏の名城だ。ツアーのガイドとして、中世城郭に詳しい戦史研究家・藤井尚夫先生が同行する本格的な内容である。
「戦国武将というと、織田信長などのビッグネームがいる近畿から東海地方に偏りがち。あまりスポットが当たらない関東の戦国武将にも注目を高めようと、ツアーを企画しました」とは、主宰の田中秀樹さん。
「普段の史跡探訪ツアーの参加者は、今回と比べ年齢もダブルスコアで男性ばかり(笑)。若い人の理解が高まり、戦国武将だけじゃなく史跡にも興味を持ってくれれば」と藤井先生。
先生も驚くように、参加者のうち26人中15人は女性。年齢層も20代から30代ばかりで、中には10代後半の女性の姿も。「ゲームが好きで、そこから歴史に興味を持った」(20代の女性参加者)と述べるように、ライトな入り口から歴史好きになった人の姿が目立つ。ちなみに男性は、筋金入りの歴史オタクが多い。
初対面同士の会話の糸口は、「好きな戦国武将は?」「出身は○○? なら△△(武将名)の地元ですね!」など、戦国好きならでは。「周りに戦国好きの友達がいないんで、趣味が合う人に会いたくて参加しました」(20代の女性参加者)と語るように、日頃のウップンを晴らすかのように各々の会話は盛り上がる。次第に男女の垣根もなくなり、同じテーマで熱く語らいだす。“戦国好き”という共通点は強力なのだ。
では、戦国ツアーに参加している女性の特徴はなんだろう? 一言で言えば、彼女達は“マジメ”だ。バスの中で繰り広げられる先生の本格的な歴史講義は、さながら大学の史学科のゼミ合宿のよう。みんな熱心に話を聞いているのが、大学の授業と大きく違う点だろうか?
行田市に到着すると、忍城跡にある郷土資料館に向かう。先生曰く「城を巡るにはまず、その土地の郷土資料館で歴史を事前に知る」のが大事だとか。…勉強になる。
一行は忍城周辺をバスで移動しながら、城の水堀、石田三成が城攻めのために築いた“石田堤”などを散策する。一見何の変哲もない住宅地の池や道路の脇に点在する合戦の跡に、先生の説明を受け興奮する参加者達。「端から見たら“一体何の集団だろう?”って思うでしょうね(笑)」(30代の女性参加者)と冷静に自分達を客観視することも忘れない。
歴史好きが集まると、異様な雰囲気を醸し出すことは確かのようで、「こんな道端であの集団は何してるんだ?」という地元の人々からの冷静な視線をヒシヒシと感じた。
「今回のバスツアーは、キャンセル待ちが出るほどの盛況でした。散策に時間を費やすため、このままの規模で今後もツアーを続けるつもりです」(田中さん)。次回の探訪地はまだ未定とのことだが、まだまだ人気を集めそうだ。
ゲームや漫画をきっかけに歴史好きになったばかりのライトな女性ファンが、熱心に歴史の話で盛り上がっている姿が印象に強く残った今回のバスツアー。「“堀の奥深さ”など城の見方が変わり、興味を持った」というコアな意見もあり、先生の狙い通り歴史好きの階段を上った女性は確かに存在する。
女性の戦国ファンが増えつつあることは、戦国好きの男にとっても朗報だろう。実際にバスツアー終了後にはなんと飲み会が開かれ、男女の垣根を越えた多くのツアー参加者が集った。共通のテーマで好きなものがあると、お互いに親睦も深めやすい。大河ドラマに興味を持ってそうな女性がいたら、バスツアーに誘ってみてはいかが? ただし、妻夫木くん目当てで見ていないことを祈る…。【東京ウォーカー/中道圭吾】