本屋大賞ノミネート作、GWに“本当に読むべき”作品は?

東京ウォーカー(全国版)

ゴールデンウィークもいよいよ後半戦。あいにくの空模様ということもあり、4連休は自宅でのんびり“読書”したい! けど何を読んでいいかわからない…という人も多いはず。そこで、都内の書店に勤務する“本読みの達人”を直撃! 現在書店でパワープッシュされている「2012年本屋大賞」ノミネート作品から、“実際どれがオススメなのか”、イチオシの作品を教えてもらった。

“書評界の重鎮”とも言える東京堂書店の河合靖さんがオススメするのは、本屋大賞5位の「ユリゴコロ」(沼田まほかる、双葉社)。

「(著者の沼田まほかるさんは)2004年に出版された代表作『九月が永遠に続けば』が、単行本の2万部に対し文庫は60万部の爆発的なヒットとなり、“まほかる”現象を起こした。今作も“ひたひたピタピタ”と迫りくる恐怖感は秀逸! 実はこの作品、まほかる本で唯一、後味が良い小説です」(河合さん)。

一方で“遊べる本屋” ヴィレッジヴァンガードの下北沢店で書籍担当を勤める、長谷川朗さんが推すのは本屋大賞2位の「ジェノサイド」(高野和明、角川書店)だ。

「ハリウッド超大作を思わせる壮大なスケール感と、派手なだけでは終わらせない緻密なストーリー構成でぐいぐい引き込まれる。僕はテレビや映画きっかけで原作にも興味を持つタイプ。僕のような人や普段本を読まない人でも、映画・漫画・ゲームのようにのめり込めること間違いないエンターテインメント作品です!」(長谷川さん)。

書店の超激戦区・新宿にある紀伊國屋書店新宿本店の小出和代さんが薦めるのは本屋大賞5位の「人質の朗読会」(小川洋子、中央公論新社)。

さまざまなジャンルの最新刊に常に目を通す、小出さんが「異国でゲリラに捕らわれた日本人8人が、捕虜生活の間、互いに『物語』を聞かせあう。それは彼らの思い出の話であり、どことなく不思議な寓話のようでもあります。もの哀しくも美しい一冊です」とオススメする。

…となると、気になるのは2012年本屋大賞受賞作「舟を編む」(三浦しをん、光文社)だろう。こちらは3人とも押しなべて高評価!

「辞書の編集に関わる人々の群像劇。何かを成し遂げるのに必要なのは、やはり人の力と思いの強さ。終盤は人前で読まないで! 間違いなく大泣きしちゃいますよ」と小出さんは激推し。同じく河合さんは「これが大賞取れなかったら、もう本屋大賞の投票やめるかも…」とまで言い、長谷川さんは「どんな職業の人でも必ず共感ポイントがある、爽快な作品」とそれぞれが推薦。“大賞受賞”は伊達ではないようだ。

「本屋大賞はたいてい読んだ」というツワモノのために、本屋大賞以外の作品でのオススメを聞くと、「須藤靖貴の『抱きしめたい』(講談社)もぜひ読んで欲しい。高校生がなぜかビートルズのコピーバンドを結成。出てくる曲もマニアックで、オヤジ心をくすぐられる懐かしさのある作品ですよ」(河合さん)、「サクッと読みたいときにオススメなのが永嶋恵美の『泥棒猫ヒナコの事件簿』(徳間文庫)。あなたの恋人強奪します! という、不穏な広告主・ヒナコの元に集まる、女たちからの依頼。甘さと苦さが同居した短編集です」(小出さん)、「文庫化を待ち望んでいた『さらば雑司ヶ谷』は、クエンティン・タランティーノの映画に出てきそうなセリフがたまらない!」(長谷川さん)とのこと。

本屋大賞を筆頭に、いずれ劣らぬ名作ぞろい。他の作品の書評は写真でも紹介しているので、ゴールデンウィークにじっくり読んで、心に響く一冊を見つけてほしい。【東京ウォーカー】

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