自然に囲まれた瀬戸内の島を舞台に、仲違いしたまま父を亡くした少女・ももがユニークな妖怪たちとの出会いを通じ、母の愛情や大事な人に思いを伝えることの大切さに気づく成長を描くアニメーション映画「ももへの手紙」。小学6年生の内弁慶なヒロインの声優を務める美山加恋が作品のことはもちろん、自身の家族観やこれからについて語ってくれた。
─「人狼 JIN-ROH」(’00)の沖浦啓之監督が7年間も案をあたためていた本作。まず、最初にもも役のオファーを受けた時はどう思いましたか?
「これまでにアフレコに参加させていただいたことはあったんですが、主人公は初めてだったのでセリフの多さや、ももが成長していく様子を表現しなきゃいけないなって、ちょっと緊張しました」
─ももという女の子についてはどんな印象を受けましたか?
「最初はセリフ(口数)も少ないので暗いのかなと思われがちですけど、実はおもしろくてお母さん想いの勇気のある女の子なんです。お父さんのこともずっと悩んでいて、小学6年生以上にしっかりした性格で抱えているものも大きいんだと思いますね」
─ご自身とももに共通点はありますか?
「ちょっとお母さんに甘えてしまうところとか(笑)、“お母さんはお父さんのことなんて忘れちゃったんだ”っていうもものセリフがあるように、ケンカをしてついついに余計なひと言を言ってしまったり…。結局、ずっと一緒にいるのでケンカもなかったように、自然にいられたりするのも家族の不思議ですよね」
─そんな内に秘めたものを持ったももを演じるにあたって心がけていたことは?
「アニメーションなので“このシーンではこういう声で…”とかいろいろと意識をしてしまって、自分のお芝居ができなくなってしまいそうだったので、ももと私は似ているし自分らしく演じようと心がけました。沖浦監督には“ももは暗く見えるかもしれないけれど、本当はおもしろい女の子なのでそういったところを表現してください”と言われたので、その点も気をつけていましたね」
─お母さん役には所属事務所の先輩でもある優香さんですね。
「いつもなら自分から積極的に共演者の方に話しかけるんですけど、今回は緊張でお水ばっかり飲んでいた記憶が…(笑)。優香さんの雰囲気は“お姉さん”なのでお母さん役にはびっくりしましたけど、一緒にお芝居をして優香さんのいつもとはまた違う優しくてあたたかみのある声が“お母さん”という感じだったので、そばにいてくれるだけで私も安心してももを演じられたと思います」
─ももとお母さんがケンカをしてしまうシーンがとても悲しくて印象的ですが、演じる時はどんな思いでしたか?
「実はあのシーンのアフレコは、優香さんとほぼ初対面の初日だったんです(笑)。それはこのシーンが一番“親子”を象徴するシーンなので、その後にほかのシーンを演じたほうが自然でいいんじゃないかっていう。ケンカのシーンは最初、どうなるのかまったく想像もつかなかったんですけど、優香さんの“お母さん”の声に安心して演じられました」
─この作品を経て、家族への想いに変化はありましたか?
「ありました! 私はこのお仕事を5歳で始めて、今年で10年になるんですけど、女優になりたいという私の夢のために撮影現場にもずっとお母さんが付いてきてくれたんです。子役だとお母さんが子どもになにかを強制させたりすることも多いんですよね。昔からでも“プロの意識を持ちなさい”とか礼儀については言われますけど、“やりたいことをやればいいよ”って言ってくれるんです。お母さんも大変だったはずなので、すごく感謝いなきゃいけないなと思いました。それにお母さんの存在が近すぎて、素直になれなかったり、ももみたいにきちんと思いを伝えることの大切さに気づかれました。ももとお母さんの絆の物語、ユニークな妖怪たちのおもしろいシーンやキレイな映像と純粋に楽しんでいただける要素がいっぱいの作品だと思います」
─では最後に。美山さんの今後の目標を教えてください。
「私はやっぱり演技をしている時が一番好きなので、今後も役者としていろんな作品に関わっていきたいです。誰かを目標にするというよりは、美山加恋という女優として“自分らしい演技”でがんばっていきたいと思っています!」
【取材・文=リワークス】