ひょんなことからゾンビになってしまった青年が、個性的なヒロインたちと共に様々なトラブルに巻き込まれていくラブコメディ「これはゾンビですか?」。現在、テレビアニメ第2期が放送中で、原作ライトノベル最新10巻「これはゾンビですか?10 はい、ラブリーでチャーミングだけどあたしは」(通常版)が5月19日(土)に発売になった本作について、原作者の木村心一さんに話を聞いた。
高校時代に、既に本作の原案を書き上げていたという木村さん。まずはその構想から執筆に至るまでを聞いてみた。「高校時代に『スレイヤーズ』を読んで、あの何巻から読み始めても世界観に入り込める、独特の軽い雰囲気に惹かれたんですよね。それで、自分でもこういう話を書いてみたいと思って執筆しました。僕の場合、執筆時は毎回書きたいシーンから考えるようにしているんですよ。それから、そのシーンを構成するにはどんなキャラが必要で、どんなセリフを言わせたら面白いか、といった順番で設定を固めていきます」。
次に、文体に対する考えを聞いてみたところ、「“読みやすさ”については、かなり意識して書いています。僕はこれを『テンションコントロール』と呼んでいるんですけど、戦闘シーンなど一気に読んでほしい場面では、ページの上半分しか使わないようにして、素早く読めるようにしています。反対に、主人公の気持ちに共感してもらいたい場面では、地の部分を多くして、ゆっくり読んでもらえるような工夫をしています」と語ってくれた。
そんな本作には、コメディとシリアスな戦闘の要素が絶妙の配分で盛り込まれているが、そこにはどんなこだわりがあるのだろうか?「根本的に“面白い作品”ではなく“楽しい作品”を作りたいという思いがあるので、コメディ要素には毎回力を入れています。でも、それだけだと話の締まりが悪いので、どの巻にも戦闘描写を2回は入れるようにしています。この配分が難しくて、昔、戦闘描写を多めにいれたら当時の担当編集の方に『いらない』って言われ、1回にしたら今度は『足りない』って。そんなこともありましたよ(笑)。それともう1つ、この作品は執筆当初から『いろんなジャンルがごった煮になった、ジャンル不明のライトノベルにしたい』と考えていました。なので作中に色々な要素を盛り込むスタンスは、今後も変わらずに続けていくつもりです」。
続いて、現在放送中のテレビアニメ版の感想も聞いてみた。「大勢のスタッフがアイデアをぶつけ合いながら作られているので、キャラクターの見せ方にしても、僕一人で考えていた時とは随分違っていて面白いですね。これは自論なんですけど、やはりメディアミックスするからには、原作とは異なる展開もアリだと思うんですよ。メディアごとにいろんな『これゾン』があった方が、ファンの皆さんの楽しみも増えるでしょうしね」。
そんなアニメ版で、木村さんは特にオープニングと次回予告の演出がお気に入りだという。「第2期のオープニングにはナレーションが入っていて、これが初期の『仮面ライダー』っぽくていいんですよ。それと、次回予告で妄想ユー(主人公の脳内に登場する本作のヒロインの一人、ユークリウッド・ヘルサイズの妄想上の姿)がたくさん出てくる演出とか、お約束だけど見ていて面白い。それと個人的な話ですが、妄想ユー役の声優さんは全員、僕の青春時代のアイドルばかりなんですよ(笑)。オンエアで初めて見た時はめちゃくちゃ感動しました!」。
アニメ版では各キャラクターが歌う挿入歌も話題になり、9月にはキャラソン・ライブイベントの開催も予定されている。この盛り上がりについては、どのように感じているのだろう?「すごく嬉しいことなんですけど、個人的には僕が作詞した曲も使ってほしかったですね。『君はいつも、イクラを全部潰していたね』ってくだりとかお気に入りなんですけど、却下されちゃって(笑)。でもライブには是非参加したいですね。ファンの皆さんに会えるのが楽しみだし、あと声優さんに会えるのも楽しみですから(笑)」。
最後に最新10巻(通常版)を書店か電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」(10巻は5月24日より配信開始)で購入するともらえる特典満載の電子小冊子について話してもらった。「まず10巻ですが、今回は肌色成分がかなり増量しています。ストーリーも本当は深刻な話なんですが、キャラクターたちがお馬鹿なことばかりやっているので重くなりすぎず、サクッと気軽に読めるようになっています。それと購入特典の電子小冊子は、コミックス1巻の試し読みやドラゴンマガジンの表紙などで使われた文庫未収録のイラストが数点まとめられた貴重なアイテムになっています。僕自身、本作のイラストの大ファンなので、ロゴや文章が載っていないこぶいちさん、むりりんさんのイラストは是非ともほしいですね」。
ライトノベルやテレビアニメ、コミックスと、メディアごとに独自の展開を見せている「これはゾンビですか?」。まだ未経験の人は、是非ともこの機会にどのメディアから入っても良いので、魅力的な「これゾン」ワールドを体感してみてほしい!【東京ウォーカー】