【EURO2012】プランデッリの下、見事に生まれ変わった新生アズーリが大会の主役に躍り出る!?

東京ウォーカー(全国版)

アズーリことイタリア代表は、2006年5月に発覚したイタリアサッカー界最大スキャンダル、カルチョーポリを乗り越え、FIFAワールドカップ ドイツ大会を見事に制した。だが、その後は低迷期が続き、チーム改革に随分と苦労した。当時、アズーリを率いていたのは名将リッピであり、チームにはワールドクラスのタレントがきら星のごとく揃っていた。ワールドカップ終了後、ドナドーニが代表監督に就任するも、アズーリは世界王者として臨んだ前回大会EURO2008では、守備の要の負傷とエースの不発が相まって、辛くもグループリーグは突破したものの、準々決勝で大会を制したスペインに敗れてしまう。その責任を取る形でドナドーニは辞任、過去の栄光を再びとばかりに、リッピが代表監督に就任するのだった。2010年のFIFAワールドカップ 南アフリカ大会に向けて、アズーリはどう復活を遂げるのか。国内での焦点はまさにそこだった。しかし蓋を開けてみると、未だ2006年の優勝メンバーが主力を占め、そのシステム(=カテナチオと呼ばれるイタリアのサッカー戦術)を引きずっているリッピに、そしてチーム体制に大きな批判が集まり、2010年FIFAワールドカップではよもやのグループリーグ敗退という悪夢に襲われ、屈辱のうちに大会を去ることになってしまう。当然のことながらリッピは引責辞任、満身創痍のアズーリを立て直すべく新たに代表監督に就任したのが、現監督のチェーザレ・プランデッリであった。就任したばかりのプランデッリには、あまりにもやるべきことが多すぎだ。何より急務なのは若返り、まさに世代交代と、新しいアズーリのシステムだった。すなわち脱カテナチオである。

そして迎えたEURO2012予選は、まさに完璧な試合をやってのける。アズーリはグループCを無敗で切り抜け、早々に本大会への切符を手にするのだった。今のアズーリは中盤で確実にボールをキープし、巧みなパスワークからチャンスを生み出していく、ポゼッションを重視した戦いに変わっている。そんなアズーリの中盤で司令塔となっているのがユベントス所属のピルロだ。2011-12シーズン、ACミランからユベントスに移籍し、移籍一年目にしてユベントスをスクデットに導いたピルロの活躍は誰しもが認めるところだろう。彼の巧みで、狙いすましたピンポイントパスはアズーリにとっての最大武器であり、ピルロの近くでプレイするマルキージオやモントリーヴォなどの若手の成長も好結果を生み出している。強固な守備は言うに及ばず、まさしく調和の取れたサッカーがプランデッリ率いるアズーリの特徴とも言えよう。そんなアズーリを精神的に支えているのが世界最高のゴールキーパーの一人、ユベントス所属のブッフォンだ。2010年のFIFAワールドカップ後、カンナヴァーロから受け継いでキャプテンに就任したブッフォンは、キャプテンに必要な資質を全て兼ね備えている。彼がゴールマウスに立つからこそ、安心感も増すのである。ピルロとブッフォン、2人は言うまでもなく2006年のワールドカップ優勝メンバーである。この2人を軸に若手が融合しているのが今のアズーリなのだ。

ここまで書くと弱点らしい弱点がないように思えるアズーリだが、やはり前線に不安要素を抱えているのは否めないだろう。予選で活躍したロッシは怪我で本大会に間に合わず、エースとして期待されるカッサーノは心臓疾患の手術から復帰したばかり、悪童バロテッリは攻撃能力は高いものの、その気性面から信頼感に欠ける部分がある。ディ・ナターレはプランデッリのファーストチョイスに入っておらず、控えに甘んじている。そういう意味で、アズーリには生粋の点取り屋、いわばヴィエリやインザーギのような、出てきたら必ず点を獲ってくれると思わせるようなフォワードがいないのだ。アズーリ上昇の鍵はこれらのフォワード陣がどこまで泥臭くても良いから点を奪えるかにかかっているだろう。

そのアズーリは6月10日に、EURO2012グループC第1節でディフェンディングチャンピオンで本大会の優勝候補No.1のスペインと対戦。結果は1-1のドローでまずまずのスタートを切った。プランデッリは試合後、この結果に満足感を表している。第2節は6月14日、苦手としているクロアチアと対戦だ。ここでは是非とも勝ち点3がほしいところだ。【東京ウォーカー】

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