【その1】(http://news.walkerplus.com/2012/0615/27/)の続き
椹木野衣様 !
先夜はDOMMUNEに僕が出演しました際まことに嬉しい丁寧なお手紙を頂戴しまして感動の極み!! 有難う御座いました。このツィッターのお仲間を通じて全国に熱気が伝わりいま、この怪しげでもあるフィルムの塊が皆さんの情熱で徐々に、映画に育ちつつあります。僕はその至福の中で只只皆さんに、有難う!と言い続けているのです。その熱い切っ掛けを作って下さった中森明夫さんと、椹木野衣さんの、嵐の夜の邂逅はまさしくあれは、映画の神が降り立つ瞬間であったのか! と。そんなひとときに、この空の花が、立ち会え、ついでに僕までがそこにいたなんて! なんとも!! 生きていて良かったなぁ!! と、この空を見上げるばかり!…
3:11、僕の心のスクリーンは全くの空白となり映画を作る、なぞ到底思われぬ状態でした。しかし此処にいま生きている以上、何かを考え何かを行う、ならば僕にとっては映画。映画を作れなくとも映画を使って何かをしなくては、とあの空白状態のままを心に保ちながら、その心の状態を必死に映画に伝えまた映画が、僕に語り掛けてくるその伝える思いを必死に読み取ろうとしておりました。僕は戸惑い混乱し、僕の目の前にある映画もまた戸惑いと混乱の極み。でもそれをそのままに据え置く事が何ものかを、後世に伝え得るかと。戸惑いと混乱とは、ワンダーランドを生き抜く道と、虚構の作家らしく覚悟を決めて、3:11の直前にいま思えば、運命的にこそ出逢っていた長岡花火を生んだ里、日本が独立国として世界に向かって両手を広げた、あの時、戊辰戦争の敗北から立ち上がり太平洋戦争の敗戦、更には、中越地震被災の後も、賢く美しい人間を育てる事こそが真の復興再生なり、と信じ、物金のみが国家作りなりと信じて来たこの国の有りようの失敗のつけが、3:11で露呈したその時に、ではこれからの日本の再生の糸口は、長岡ワンダーランドの中にこそ有りや! と、そればかりを信じて戸惑い混乱の真っ只中に遮二無二突き進んで行った。僕に出来た事はただ、それだけです。…
転生! なるほど、戊辰戦争敗北の里の再生の知恵とは、転生でありましたか!! 命から命への、転生こそが古里の再生。命を物 金にかえても復興再生に非ず。太平洋戦争の、敗戦少年であった僕が、敗戦後の日本の復興とはしゃぎすぎた怪しげな平和なるものに何か怯え、高度経済成長期の古里興しなるものに大いなる疑問を持ち、世の倣いとは逆の、古里守りの映画を作り続けて来た。 それは転生! の、夢、願いでありましたか!! 自分では見えなかった僕の映画の内部が、3:11の戸惑い、混乱の無自覚の中からこそ噴出し、それを椹木さんや、中森さんが感受して下さりこの怪しげなフィルムの塊がいま、映画になりつつある。僕がではなく、この映画に出逢われたみなさんが、それぞれさまざまに自らを駆り立てるようにこの空の花を、映画に作り上げて下さる。それはまさにいま我々の誰もがねがう、再生とは転生なり、の夢。賢く美しい、我ら日本の、いまや失われた人の心を、魂をこそ、古から未来へ、転生させようではないか、という人間の本能が、この映画のワンダーランドにさまよいこんだ皆さんの心を騒がせたのでは ないかしら!? この映画は、かくして椹木さんの、転生なる言語によって、発見されたのでした! 有り難い事です。…
中森明夫さんの著作アナーキー・イン・ザ・Jpでは、昭和前~昭和後を結んで、昭和をあぶり出そうとされています。そこに昭和少年の僕のこの空の花を入れ子にすれば、この、戦争と平和がそのまま地続きとなった 昭和の正体が 見えてきます。中森さんの著作に僕は激しい戦慄を覚えましたが、中森さんともそのような共感で、この映画が結ばれたのだと思います。何故、椹木さん、中森さんが、共にこの映画を見られたのか!! それは、自然界、の人類よ、転生せよの意志でこそあったのか。
椹木さん、中森さん、から始まったこのツイッターの熱気は確実に劇場に繋がっております。自主制作自主配給のこの映画では 宣伝費も無く、熱血劇場主の心意気で上映を敢行して来ましたがツィッター仲間の皆さんの結束で劇場主の友情にも応えられつつあります。東京での公開は劇場のスケジュールもあって今週で一旦終わりますが、ツィッターの熱気を受けて次の劇場も可能性が出てきました。昨日まで福山、尾道、名古屋、弘前での公開に立ち合っていましたが、ツィッター仲間は全国的に広がり、劇場がどんどん増えております。
来週は関西方面、それから、夏に掛けて九州から北海道へと旅します。僅かのプリントを順番に運ぶ自主上映の旅ですから全国を回るのは細かいフォローを入れると二年掛かりの公開となります。何卒末永い応援をお願いいたします。今年の夏も長岡花火は、石巻で打ち上げられる予定と聞きます。その時にはこの映画も一緒にと、いよいよ 東日本にも、上映活動を広げたい。そのための映画の体力作りにも皆さんの支えが大いに力となります。長くなりましたがいろんな思いと感謝の気持ちをお伝えしたくて書き連ねました。御免なさい!! 有難う御座います。またきっと、どこかでお逢い出来る機会があるでしょう。その時を楽しみにして。ツィッター仲間の皆さんにくれぐれも宜しくお伝え下さいな。ではここで、筆を置きます。失礼致しました。感謝!…
大林宣彦
2012年6月5日
映画『この空の花 -長岡花火物語』は、大阪は布施ラインシネマで6/23(土)より、京都は京都みなみ会館で8/11(土)より公開予定。
【その1】は(http://news.walkerplus.com/2012/0615/27/)へ。
また、6/28(木)19時~21時にはUSTREAMやツイッターで配信される実況番組「DOMMUNE(どみゅーん)」にて、トークライブの第二弾が開催される。今回は「大林宣彦×中森明夫×髙嶋政宏×大林千茱萸」のスペシャルゲストが多数出演。詳しくは「DOMMUNE」(http://www.dommune.com/)をチェックしよう。