(1の続き→http://news.walkerplus.com/2012/0622/15/)
―僕が初めてお逢いしたのが「New Pretty」(06年発表アルバム)の頃だったんですね。カジ君も再度日本を重点に置いた活動を考えておられた時期で。とにかくアルバムからパワーを感じてかっこよかったので、「キッズたちにフェスで見せてやってほしいです!」と言ったのを凄く覚えてます。外国に行かれてるのも素敵なんですけど、もう一度日本でどっぷり戦ってほしかったんです。
「当時、チャーベ君はCUBISMO GRAFICO FIVEみたいなバンドで戦ってて、物凄く信頼を得たんだと思うんです。その姿勢は凄くカッコ良かったし。でも自分が凄くよかったなと思うのは、その頃ロンドンで新しく生まれたシーンを体感出来たこと。それは、誰も味わえないような刺激的な経験でしたし、『New Pretty』はそういう要素が強く入ったアルバムでもあります。でも、ライブはお客さんとの距離を感じたし、お客さんも『たまにしかライブをやらない』と思っていただろうし、辛いなと思ってくれた人もいたかもしれません。点みたいな活動はよくないし、まさに今言ってくれたみたいな事だったんだろうなと。その時期にBEAT CRUSADERSのヒダカ君が淡路島でやったフェス『BOYZ OF SUMMER』に誘ってくれて。それは僕にとって、本当に大きな転機でした。かなり、その後の活動に影響があったなって。清水音泉(関西のイベンター)の田口くんに出会ったのも、この時ですしね」
―カジ君もそうですが、90年代自分が学生時代に触れていた人が、今も現役で元気なんですよね。
「90年代の頃はあまり共通点がなかったり、親しくなかった人にも、今は凄く共感を覚えるんです。45歳になりましたけど、40を過ぎた頃から、同じ時を歩んで来た人達にリスペクトの想いが強くなりましたね。特に最近、凄くそう思うのはフラワーカンパニーズさん。98年頃に、1回くらい対バンをしたけど全然話したりもせず、遠い感じがしたんです(笑)。でも本当に素晴らしいバンドですよね!最近は、仲良くしてもらっています。ジャンルとかが、40を過ぎて取っ払えるようになったというか。一緒に成長している人、特に同年代の方々には、凄くリスペクトしています」
―あと、今作の収録曲「ホワイトシューズ」ですごくリアリティーを感じたんですね。サウンド的にはカジ君なんですが、またいつもと違った感覚を感じたんですね。今回のアルバムで、そこが一番肝じゃないかなって。
「うん、『ホワイトシューズ』っていう曲は今まで書いた中でも一番リアルでもあるし、本当に切羽詰って書いたというか。ある企業のキャンペーン用の曲として依頼された時は、能天気なポップソングを書きたいと思っていて。でも、大震災が起きて、原発事故も起きて、真っ暗な3月で…。全く曲を書く気力もなく、でも締め切りがあるのに、どうしたらいいんだろうって。3週間くらいたった朝、ふと出来上がったのが、この曲で。いわゆる社会的な現実の中で書くことって、そこまでなくて。だから、すごくリアリティがある曲だと思います。現実問題の中ですごく真剣になって、ドリーミーだけじゃいけないなと。普段は夢を売るお仕事なので、ドリーミーなものが好きなんですけど(笑)。だから、よく書けたなと。本当に全く書けなかったので(汗)」
―今回のアルバム自体、醸し出すものはドリーミーなんですけど、根本にあるのはすごくリアリティがあって。
「いやぁ、すごく、そうだと思います」
―ドリーミーさがあるから、リアリティがあっても、聴いていてしんどくならないんですよ。何回も聴けるレコードなんですよね。リアリティさがあり過ぎると、集中力で消耗し過ぎて何回も聞けないじゃないですか。
「うんうん。基本的に音楽は聴いた瞬間ハッピーになれて、3分でも30分でも、その時間が幸せでいれるのが、自分の作品としてはいいなって思いますね。特に今回のアルバムは、そういうアルバムにしたかったですね」
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【取材・文=鈴木淳史】