【WEB連載】酒女倶楽部の日本酒レポート        3本目「神稲」(兵庫県・太陽酒造)

関西ウォーカー

失恋したとき、どんなお酒を飲みたいですか? わたしは、濃い味の、ガンとくるお酒を飲みたいです。「しっかりしなさい。明日があるのよ!」と言ってくれるような、力強いお酒で励まされたいなあ、と思います。

わたしの失恋酒(といっても、失恋する相手もいないけど…)は、これ。

太陽酒造http://taiyousyuzou.web.fc2.com/(兵庫県明石市)「神稲」。

かみいね、って読んじゃいますよね。でもこれ「くましね」って読むんです。なんか、名前からしてカッコいい。

神稲は、「野条穂」という品種のお米で作られています。食べるお米ではなく、お酒に適した「酒造好適米」という、日本酒をつくるためだけに作られたお米です。ところが、このお米、とても育てにくいお米だったため、時代の流れの中で、だんだん途絶えていってしまったのです。

それを復活させたのが、この一本。ごくわずかしか収穫できないお米で醸された、まさしく、まぼろしのお酒なのです。手のかかるものほど美味なのでしょうか。神稲は、華やかな香りとしみわたるような甘い味わいがたまりません。もう一杯、またもう一杯とおねだりしたくなる後引き感があります。ん~~やめられない止まらない…。

それにしても、このお酒をつくる「太陽酒造」さん、ちょっと変わった蔵元さんです。「端麗辛口に半旗をひるがえす!」。これがキャッチフレーズです。辛口ですっきりしたお酒なんか作ってたまるか!どっしりした、味の濃い純米酒だけを作るぞ、という思いが込められているようなのです。男前ですね。一本気ですね。確かに、太陽酒造さんの作るお酒は、甘み、辛み、酸味、苦み、滋味といったすべての味の要素をはらんでいて、圧倒的なパンチと存在感があります。飲まれる方、必ずお水片手に飲んでくださいね。その濃さゆえに、かぱかぱいっていると、いつの間にかノックアウトされちゃいますよ。

日本酒は、恋の傷をもいやしてくれる良薬。飲んで、いやなことを乗り越えて、がんばってまいりましょう!

甘さ度★★★★☆ 辛さ度★☆☆☆☆ 女性度★★☆☆☆ 男性度★★★★☆

合う料理:奈良漬け、納豆

このお酒を芸能人に例えると…肝の座った、どっしりとした濃厚演技が光る「荻野目慶子」さん!

※甘さ辛さ度、女性男性度、合う料理は、すべて高野の独断と偏見です。

【文・写真=酒女倶楽部・高野朋美】

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