近年に起こった事件や事例を思い起こさせるセリフやシーンが数多く登場することが多い劇団クロムモリブデン。前回の'11年12月の公演では、東日本大震災が根底にあり、今回の新作「進化とみなしていいでしょう」は震災のあとの年末のオウム事件の指名手配犯自首騒動を思わせる。
作・演出の青木秀樹はこの自首騒動は、阪神淡路大震災のあとのオウム事件をフラッシュバックさせるという。「東日本大震災後、コミュニケーションが取れない、相手の感情がわからないヒトが増えているんじゃないか、と思いました。社会性を欠いたヒトを巡る問題が多く取りざたされる現代は、これは退化しているのではなく、“進化”しているのではないか、と考えたんです。現代のコミュニケーションの新たな形を巡る物語です」と今回の作品ができるきっかけを語る。だが、きっかけは昨年末であったが、制作が進む中、なんと残りの逃走犯2人も逮捕されるという現実に。これには、青木自身もビックリしたようだが、作品の「相手の感情がわからないヒトばかりの登場人物」という設定に揺るぐものはなく、クロムらしい見せ方で現代のコミュニケーション芝居を体感できる作品だ。
個性強すぎる劇団員に加え、今回は3名の客演女優が初参加。佐藤みゆき、手塚けだま、ゆにばがより一層舞台を盛り上げている。