何度も監督を殴りそうになる!? 豊田利晃監督作「I’M FLASH!」で主役の藤原竜也が見せた素顔とは!?

関西ウォーカー

ある事件をきっかけに、運命の歯車が狂いだす新興宗教団体の教祖・ルイと、彼を巡るシリアスな人間模様が展開する豊田利晃監督作「I’M FLASH!」。主演を務める藤原竜也は、豊田監督との仕事を長年熱望していたそうだが、その現場は苦労の連続だったようで…。

──藤原さんは豊田監督とずっと映画を撮りたいと思っていたそうですが、監督の作品のどんなところに魅力を感じていたんでしょうか?

「僕が10代の時に豊田監督の作品を観て、自分の中にはない新たな感性が刺激されたんです。今までに見たことのない才能を感じましたし、社会的批判を込めた攻撃性と強烈なメッセージ性もありすごく刺激を受けました。そうしたら、今から5~6年前に豊田監督がある日僕の舞台を観に来てくれて、そこから交流が始まったんですが、お会いするたびに“僕で映画を撮ってください。脚本を書いてください”という話をしていて、それが今回やっと実現したんです。豊田監督はすごく繊細な方ですが、その人間性が僕にとって興味深かったですね」

──今回、藤原さんが演じるルイは、宗教団体の教祖と崇められ窮屈な思いをする一方で、人の“生死”を間近で触れ、自らの人生を見つめ直すという今までにない役を演じられますね。

「脚本を初めて読んだ時、ルイは豊田利晃自身だと思いました。監督もどん底を経験して、そこから這い上がってきていますし、それをセリフにも投影したんじゃないかと。それは心に突き刺さった部分ですね。」

──特に苦労したというシーンは?

「ルイは水の中にいるときだけ、外の世界を遮断して自己を解放できるというキャラクターなので、僕自身はは水が大嫌いですが一日何時間も水中に潜らされました(苦笑)。沖縄で撮影をしていたんですが、撮影中に台風が3つきたりとかしたので、撮影のテンションのキープも大変。モノづくりの現場はどこも大変ですけど、今回は余計にそれを感じました」

──現場の雰囲気も相当ハードだったそうですが、今まで演じたことのないような役柄へどのようにアプローチされましたか?

「これがすごく大変でした。30~40回やっても、監督からOKが出ないんです(苦笑)。10回くらいのNGなら“ここでつまづいちゃってスタッフさんに悪いなぁ”と思うんですけど、20~30回目になるとなにがなんだかわからなくなって、40回目くらいになると“なんでOKが出ないの!?”って監督への憎しみの感情しかなくなるんです(笑)。それで“前のテイクを見せてほしい”と監督にお願いをしても“ダメだ”と言われて…。俳優をとことん揺さぶり、苛立たせ、追いこんで、混乱させてそこから出てきた一番シンプルな演技をチョイスするんですよね。でも、そこの境地がおもしろいんですよ。僕ら演じる側は“撮られている”という意識とか余計な雑念が拭いきれない時があるんですけど、豊田監督はそれを取っ払いたかったのかなとも思いますね」

──藤原さんの俳優としてのキャリアを覆されるような現場から得たものは?

「演じるうえで気持ちに余裕が出てきたと思いますし、だけど、豊田監督みたいな方もなかなかいないですしありがたいことです。いい経験ができました。」

──では、映画をこれからご覧になる方へメッセージをお願いします!

「これまでの豊田監督の作品は、映画を通して投げかけたメッセージの理解に観客が苦しむような反応を見せても、スパッと一刀両断しちゃうような残酷なところがあると思っていたんです。でも、今回の『I’M FLASH!』には僕は初めて観た時に監督の中でどういう変化があったのかわからないけれど、一歩二歩でも観客に歩み寄ってとがっていた部分を削って作品を伝えているなぁと思いました。監督も今回、僕に“これまで見たことがないような藤原を演出したい”と言ってくれたんですが、それは監督自身も変わっていかなきゃいけないということでしょうし。僕にとっても監督にとってもこの作品が完成してよかったと思います。とにかく劇場に足を運んで観ていただきたいです。僕が何度も海で溺れそうになって、監督を何度も殴りそうになるくらいに(笑)思いのつまった作品ですのでぜひ観てほしいです」

【取材・文=リワークス】

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