映画「莫逆家族 バクギャクファミーリア」熊切和嘉監督インタビュー【後編】 「映画の中に絶対的な恐怖のカリスマが欲しかった」

関西ウォーカー

―豪華キャスト共演で不良少年たちのその後の人生を描いた映画『莫逆家族 バクギャクファミーリア』。主演・徳井義実の魅力を紹介したインタビュー前編に続き、後編では彼を支えた共演者たちの活躍ぶり、そして劇中の音楽について熊切監督に語ってもらった。

Q:本作は関東一の暴走族「神叉」に関わっていた男たちを中心にした群像劇としても見ることができます。個性的なキャラクターたちを一つの作品で成立させるのは大変ではなかったですか?

キャラクターの人数もそうですが、映画の中で過去を回想するシーンが多かったので、キャストの皆さんには、10代の暴走族時代も演じてもらいました。たとえば回想シーンだけ若い俳優に変えたりすると、見ている人が混乱すると思ったんで。昔の映画って、一人の役者に若い頃から年をとったところまで演じさせていたりするので、30代~40代のキャストの皆さんが10代を演じても成立するんじゃないかなと。回想シーンに関しては、若干のシャレも含んでいます(笑)。撮影前から阿部サダヲさんと大森南朋さんのタイマンシーンは「大丈夫かなぁ」と心配していました(笑)。でもいざ衣装を着て、髪型も変えると様になるもので、特に北村一輝さんは特攻服も、あの“湘爆”っぽいヘアスタイルもかなり似合ってましたね。キャラの描き分けで言えば、メイクや髪型、特攻服の文字の刺繍やデザインにはこだわりました。

Q:暴走族「神叉」の18代総長を演じたミュージシャンの中村達也さんが本気で怖かったです

映画の中に「絶対的な恐怖のカリスマ」といえるキャラクターが欲しかったんです。撮影現場にいるだけで怖いぐらいの(笑)。その怖さは既成の俳優よりも異質な存在感のある人がいいなと考えて達也さんに出演をお願いしました。僕は世代的にブランキー・ジェット・シティを聴いていて、かねてから達也さんのことが大好きだったんですよ。達也さんはこれまでいろんな映画に出演していますが、今までは達也さん自身のキャラクターを活かした役が多かったと思います。今回は暴走族「神叉」の18代総長という役柄があって、僕も達也さんのお芝居について、撮影現場で粘ったところもあるので、完成した映画を見た達也さんは「これまでとは違う自分の一面が見れたよ」と喜んでくれました。

Q:クライマックスには遠藤ミチロウの楽曲「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました」が使用されていますが、そのいきさつは?

撮影現場へ移動する車の中で、テンションを上げるためにミチロウさんの曲を聴いていたんです。クライマックスシーンを撮影するときに、カメラマンから「ここは曲のイメージがありますか?」と質問されたんで、ちょうどその時に聴いていた曲「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました」を伝えたんです。その後、撮影された映像をチェックしたらカメラワークと、曲のリズムがあっていたんですよね。プロデューサーもそのシーンでミチロウさんの曲を使うことを了承してくれて、さらにミチロウさんが映画のためにあの曲を録音し直してくれたんですよ。余談ですが、達也さんが昔、スターリンでドラムを叩いていたことがあったので、ミチロウさんは「達也も映画に出てるんですね!」って喜んでくれて。達也さんには、ミチロウさんの曲を使うことを内緒にしていたんですけど、完成した映画を見たときには、大喜びしてくれましたね。

―音楽や、キャストたちのエピソードを通して本作の魅力を語ってくれた熊切監督。個性的なキャストが織り成す人間ドラマを、ぜひスクリーンで体感してほしい。

※前編はコチラ!→http://news.walkerplus.com/2012/0914/35/

【取材・文=関西ウォーカー編集部・鈴木大志】

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