秋の観光でにぎわう京都の街で絶賛公演中のノンバーバルパフォーマンス「ギア-GEAR-」の連載コラム第12回目(毎週木曜日更新)。今回も制作スタッフの大名(だいみょう)が、「ギア」演出部のウォーリー木下さんにインタビュー。
「Ver.2.00公演もスタートして、はや一か月。Ver.1.00に引き続き、ギア公演はお客様からの好評をいただいております。今回はギアと言う演目の芯に近い演出を担当している演出部のウォーリー木下さんにインタビューしました。」
大名:本日は『cinq cafe』さんにお邪魔しております。選ばれたきっかけは?
ウォーリー:今日はじめて来店しました。劇場の近くにあるので、気になっていました。このインタビューを機会にお邪魔したのですが、京都らしい町家を改装して作られたお店らしく、雰囲気も良くて、良いお店ですね。
大名:さて、このインタビューも形式が確立して来まして、まずは幼少期どんな少年だったかをお聞かせください。
ウォーリー:僕は東京の下町育ちで、寅さんとか、両さんとか、ホントにあんな雰囲気の街で少年時代を過ごしてました。発泡スチロールで船を造って川に浮かべて遊んだり、近所の団地で鬼ごっこをしたり、自分たちでルールを作って遊んだり、遊んでばっかりでしたね。それが小学6年生のときに福井県へ転校をして、周囲の環境ががらりと変わりました。東京では当然のようにあったアニメやマンガ、テレビなんかの情報が無くなったことも大きかったですが、それよりもコミュニティーの変化が衝撃的でした。言葉はもちろん、人間関係や社会的なルールなど、東京とはまったく違う文化がそこにはありました。こっちからすれば東京弁が標準語だと思ってるんですが、逆なんですね。ここでは福井弁が標準語なんです。当然いじめられないようにするのに必死でした。心から理解しあえる友達ができるまでは、しゃべらないこと、周囲のルールを知ること、そして誰とも仲良くならないこと。そうする事で、いじめっ子たちに付け入る隙を与えないように工夫しました。ともかく中高の6年間を東京とは違う場所で、とても大切な経験をたくさんしましたね。
大名:その後は、どのようにして舞台演出の道へ入られましたか?
ウォーリー:神戸の大学へ進学し、そのときに大学の劇団に入りました。僕はもっぱら裏方で、只裏方の仕事は舞台美術、音響、照明、制作、演出、ほとんど全てを経験しました。その後、劇団を旗揚げしいまに至ります。
大名:「ギア」の特徴はどの辺りにありますか?
ウォーリー:最近はお芝居をスタジオやカフェなど、さまざまな場所で気軽に演じられることが増えてるように思うのですが、「ギア」はその流れに逆行して、舞台セットがあり、その劇場でなければ、その場所でなければ演じることが出来ない演目を上演しています。その点が、他の「場所」を必要としない演目とは一線を画したお芝居をしていると思います。そしていろいろなジャンルをコンプレックス(複合)させていることも魅力です。ジャンル同士のぶつかり合いのなかからも「ギア」の魅力が生まれてると思います。
大名:演出を付けるときに大切にされていることは?
ウォーリー:僕は芝居の上での改善ポイントを直接言葉で指示を出すのではなく、演者自身がそのポイントに気付いてほしいと思っています。その実感をもとに演じられる方が、他人の指示で演じるよりも絶対に説得力が生まれます。そして、共演者同士がその実感を共有できるくらいに演技することを大切に考えてほしい。どんな芝居であっても、舞台の上で共演者同士は生で情報交換を行ってる訳です。そのライブ感を大切にしてほしいと思っています。「ギア」にも演目の大筋や、特定の所作がありますが、それらの型がもしできていなくても、ライブ感で伝えられる楽しさがあることを忘れないでほしい。先ずは演者が楽しいと感じ、それを見て、お客さんの心が動く、メッセージはその後に届くのだと思います。
大名:今後は「ギア」をどのように演出して行かれますか?
ウォーリー:演出家一人では何もできません。みんなでできることを、より良いものにしていくことが肝心です。そして、「ギア」のなかで僕はいわゆる「演出家」ではありませんので、主体的にみんなを引っ張る役目は担ってはいません。引っ張るのではなく、修正をしていくような役目ですね。例えば大事な事柄が忘れられたり、こぼれ落ちたりしそうなときにそれを拾って、もう一度みんなに大切なことを思い出してもらったりする。ただし、何かに捕われてしまったり、しがみついてしまったりしてもダメだと感じています。「ギア」というチームはみんながフラットに意見を出し合える。その分、迷路のような形になっていて、まっすぐ進んでいける訳ではないかもしれない。でもやってみないことには結果は解らない。今回はジャグリングと言う新しいジャンルも加わり、「ギア」の中でたくさんのコミュニケーションが取られています。そのコミュニケーションを大切に、面白いことが出来るチームとして、進化をし続けてほしいと願っています。
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