朝夕涼しくなってきましたね〜。ようやく秋本番な感じです。さて、今回も、前回と同じく、秋にしか出回らないお酒、ご紹介しますね。
そのお酒は「寫樂 なごしざけ」。宮泉銘醸 http://www.miyaizumi.co.jp/という蔵が作っていらっしゃいます。このお酒のどこか秋限定なの?という点ですが、はい、お教えしちゃいますよ。「なごしざけ」というところが、ポイントなのです。
なごしざけ、を漢字で書くと「夏越し酒」。夏を越したお酒、という意味です。「夏を越したお酒?前回のレポートで紹介された『ひやおろし』も、ひと夏越したお酒だったよね」と思ってくださった酒女倶楽部レポートファンのみなさん。すばらしい!ありがとうございます!その通りでございます!なごしざけもまた、冬に仕込んだお酒をひと夏寝かせた、ひやおろしの仲間です。
では、なぜ「ひやおろし」と言わず「なごしざけ」と呼ぶのか。一説によると、「ひやおろし」はタンク貯蔵の状態で夏を越したお酒で、「なごしざけ」は瓶の状態で夏を越したお酒、とのこと。でも実際には、なごしざけ、というのは、夏を越したばかりのお酒だよ、という「季節感」を表したものみたいです。いずれにせよ、夏でもひんやりとしている蔵の中で、静かにまろやかさを増した日本酒、というわけです。
さ、説明はこのくらいにして、お味のほどを語ってまいりましょう。まず良い気分にさせてくれるのが、その香り。華やか過ぎず、かといって質素過ぎない、上品さがあるんです。いや、上品というより「気品」ですね。口に含むと、香りといっしょに、これまた気品ある甘みと清らかさが漂うんです。
さらにハッとさせてくれるのが、お料理と合わせたとき。食べ物と合わせると、それまで主張していた香りがふっと一歩下がり、お料理の味のほうを引き立ててくれるんです。なんて奥ゆかしい!自分は前に出ることなく、誰かを際立たせてくれる、名脇役の風格さえ感じるのです。
実は、宮泉銘醸さんのつくる「寫樂」という銘柄、わたしの五本の指に入るほどのお気に入りです。このお酒のラベルには「純愛仕込」という文字がありますが、これは、日本酒を愛する人のため、そして日本酒のおいしさをまだ知らない人のために、愛をこめてつくった、という意味。そう、愛ですよ、愛。愛こそが、人を感動させるのです!この一本を飲んだ人が、日本酒への愛を感じてくれたらうれしいなあって、思います。
甘さ度★★★☆☆ 辛さ度★★☆☆☆ 女性度★★★☆☆ 男性度★★☆☆☆
◆合う料理:煮物、お刺身、天ぷら、月を見ながらお酒だけもステキ
◆このお酒を芸能人に例えると…きちんと存在感を出しながらも、主役を引き立たせる天才「余貴美子」さん!
※甘さ辛さ度、女性男性度、合う料理は、すべて高野の独断と偏見です。
【文・写真=酒女倶楽部・高野朋美】