だんだんと寒くなり木々が紅葉し始めた京都の街で絶賛公演中のノンバーバルパフォーマンス「ギア-GEAR-」の連載コラム第19回目(毎週木曜日更新)。
今回も制作スタッフの大名(だいみょう)が、京都・木屋町のイタリア料理店『メリーアイランド』さんにて『ギア-GEAR-』にドール役として出演中の平本茜子(あかね)さんにインタビュー。
大名:本日は『メリーアイランド』さんにお邪魔しています。選ばれたきっかけは?
平本茜子(以下平本):木屋町といえば京都の夜の賑わいの中心地ですが、御池通界隈を北へ行くと、ぐっと落ち着いた雰囲気に変わるんです。その地域にあるカフェで、前から気になっていたんですよね。今回初めてお邪魔してみて、雰囲気も素敵ですし、料理も美味しいですし、やっぱり選んでよかったです。
大名:では、まず平本さんのルーツからお伺いしたいと思います。
平本:山口県の瀬戸内海に浮かぶ島で生まれ育ちました。小さいころからジャズダンスやバレエなどのダンスが大好きな子でしたが、島にはダンスをちゃんと習える環境が無かったので、中学生のころには島の外までダンスを習いに通ったりしていました。19歳のころに単身大阪に出てきて、それから演劇やダンスに本格的に打ち込んでいきました。劇団に所属したり、フリーで活動したりしながら、いろんなオーディションを受けていて、ある日突然、現在所属しているよしもとの劇団員募集に合格したんです。自分が受かるとは思っていなかったので、ビックリでしたね。実はその後、劇団の旗揚げ公演では脚本も担当させていただいたんですよ。
大名:そうだったんですね。では、ギアとはどのようにして出会われたのでしょうか?
平本:マネージャーさんがパフォーマー募集の情報を教えてくれたんです。その届いた情報を読んでみたのですが、正直どんな舞台公演なのか全く分かりませんでした(笑)。言葉は使わないし、関わったことのないようないろんなジャンルの人が出演しているし、本当にどんな内容のものなのかイメージもできなかったんです。でも、とりあえず受けてみようとオーディションに行ったのがきっかけですね。
大名:オーディションで心に残っているエピソードなどあれば教えてください。
平本:オーディションのプログラムの一つにアピールタイムというのがあったんですが、私はそんな時間があることをそのときまで知らなかったんです(笑)。それで、以前振り付けをしたことがある音楽がたまたま携帯電話に入っていたので、とりあえずそれを使ってアピールしよう、ということになったんですね。扇子を使う振付の音楽で、扇子のかわりにクリアファイルで踊ろうと思っていたところ(笑)、オーディション審査員のいいむろなおきさん(現在もギア出演中)が持っていた扇子を差し出して「僕のを使っていいよ」と言ってくださったんです。激しい振りで壊してしまう恐れがあったのでお断りしたんですが、「この扇子はもうボロボロだから壊してくれていいし、その方が新しい扇子を買ういいきっかけになるよ」と言ってくださったんですね。それで本当に壊して返しちゃったんです(笑)。後日、いいむろさんから「あの扇子を壊したのがいいと思ったんだよ。あんな根性ある人なかなかいないからね」と言われました(笑)。
大名:それからトライアウト(試験)公演を重ねて、現在の京都ロングラン公演に至るわけですが、そのなかで印象深い出来事はありましたか?
平本:10年12月から11年1月にかけて参加した長崎県のテーマパーク内での公演ですね。公演前にミニステージをやって、自分たちでチラシ配りをして、それでもなかなかお客様が集まらなくて、ホテルに帰ってからみんなで集まって本番動画を見ながら議論をして…という毎日でした。本当に合宿みたいな感じです。とてもつらかったですが、いまとなってはあの経験がすごく活きているな、と思いますね。
【GEAR'S VOICE Vol.19 PART2】へ続く。
【ノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』とは?】
ブロードウェイの『ブルーマン』や韓国の『ナンタ』などで注目を集めた「ノンバーバルパフォーマンス」とは、言葉を全く使わない新しいタイプの舞台公演。『ギア-GEAR-』は、マイム、ブレイクダンス、マジック、ジャグリングの超絶パフォーマンスとプロジェクションマッピングなどのテクノロジーが融合した、日本発・日本初の非言語エンターテイメント。舞台は古びたおもちゃ工場。かつてその商品だった人形「ドール」が、作業を続ける人間型ロボット「ロボロイド」とふれ合い、感情を獲得し、人間に近づいていく感動の物語。2012年4月よりロングラン公演をスタートし、9月より新たにVer.2.00を上演! 大人から子どもまで、日本語がわからない外国の方でも楽しめる、70分100席限定の衝撃体験。