酒女倶楽部の日本酒レポート12本目~「こだわって醸したお酒香住鶴~生酛純米ひやおろし」(兵庫県・香住鶴)~

関西ウォーカー

焼酎の量り売りはたまに見かけることがありますが、日本酒も量り売りって、あるんですよ。それが今回ご紹介の「こだわって醸したお酒 香住鶴〜生酛純米ひやおろし」(香住鶴http://www.fukuchiya.co.jp/)。なが~い名前ですね。こだわって作った感、出てますね。

香住鶴といえば、山陰のカニどころ、香住の酒蔵としてかなり知られています。あれは昨年秋のこと。日本酒好きの友達から「これあげる~」と渡された一本が、まさに量り売りの香住鶴だったんです。「なにこれ、おいしいじゃん!」「でしょ~」「買いたい買いたい。どこのお店で買える?」「そこらのお店では買えない」「なんでなんで?」「量り売りやってるところでしか買えないから。香住まで行くしかないね」「…まじ?(泣)」

そうやって、あっという間に1年が経ち…。ようやく手に入れました!いやあ、それにしても量り売りっていいですね。大きなタンクから直接お酒がくまれるそのダイナミックさと言ったら。そしてまた、このブルーの瓶がなんとも美しいんですよ。

さっそく、愛でるように一杯いただきました。うむ!こってりとした味わい。プッチンプリンが端麗辛口のお酒だとしたら、これはトロトロの濃厚プリンといったところです。そして、なんといってもステキなのは、コクのある酸味。「酸っぱいの?」と聞かれそうですが、日本酒の酸味は、食酢みたいに刺すような酸っぱさではなく、乳酸菌系飲料みたいなほのかな酸味なのです。

酸味のある日本酒って、実はお肉や油っこい食べ物と、けっこう合うんです。料理のオイリーさを酸が散らしてくれるんですね。「でも、なんで酸味が強いの?」。いい質問です!それは、このお酒の「作り方」と関係しているのです。

このお酒は「生酛(きもと)」という方法で作られています。生酛づくりは、昔ながらの伝統的な製法で、ずっと昔、日本酒はほぼこの作り方で醸されていました。

すごく特徴的なのは「お米を擦る」工程があることなんです。蔵人たちが、蒸した米をすってすってすり倒す。それはもう重労働な作業です。

このとき、空気中にいる乳酸菌がお米に取り込まれ、乳酸を発生させて酸味が生まれます。乳酸が生まれるからこそ、雑菌が抑えられ、おいしい日本酒が出来上がってくるわけです。ブラボー!ニッポンの酒造り。だから「生酛」と書かれたお酒は、たいてい濃厚な味わいと酸味があるし、どっしりしている。サムライな感じがします。

サムライなお酒には、やっぱり和食でしょう!ということで、少し濃いめに味つけた高野豆腐とともにいただきました。うまいね〜。ふけゆく秋、私はどんどん酔い子になってゆくのです。今宵もきらめく月夜がきれい。美酒乾杯♩

甘さ度★★☆☆☆ 辛さ度★★★☆☆ 女性度★★☆☆☆ 男性度★★★★☆

◆合う料理:サーモンのたたき、煮しめ、豚汁

◆このお酒を芸能人に例えると…見た目はさわやか系だけど、こってりとした演技力の「浅野温子」さん!

※甘さ辛さ度、女性男性度、合う料理は、すべて高野の独断と偏見です。

【文・写真=酒女倶楽部・高野朋美】

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