ことしで23年を迎える劇団・猫のホテル。昨年末の上演作「わたしのアイドル」では女優二人芝居を披露したが、今回の「峠越えのチャンピオン」は作・演出の千葉雅子が強く惹かれる時代劇をモチーフにした作品。千葉自身、幼心の記憶に未だ惹かれる時代劇ドラマ「木枯らし紋次郎」の、枯れた世界感を意識している。
「小さい頃、リアルタイムで『木枯らし紋次郎』を見ていました。最近、再び見るようになって、暴力と情念の世界を描きたいな、と思ったんですね。もともと、汗くさい男の世界が好きで。思い切って、“紋次郎”の時代劇に挑戦したくなりました。かつて『イメチェン』では、(興味深い)政治家を扱ったので、その政治家というよりは、権力に近い人のオチぶれように注目しました」と、千葉は今作への思いを語る。
今回は、長年交流のある動物電気主宰・政岡泰志やアクションクラブの前田悟が客演として登場。「前田さんがいてくれるので、殺陣をつけるのが早かったですね。彼のおかげで皆、気持ちよく斬ったり斬られたり(笑)」と、安定した稽古ぶりだったことをうかがわせる。
2011年、菅原永二が退団してフリーに、今年は池田鉄洋がユニット「表現・さわやか」に専念するため劇団を離れた。まさに過渡期を迎えている猫のホテルの最新作は下北沢・ザ・スズナリで11月18日(日)まで上演中。【東京ウォーカー】