【WEB連載】仮想DJ「昭和歌謡エンドレスリピート」9曲目「永遠のクレイジーキャッツ」

関西ウォーカー

みなさんこんにちは。

11月12日、「クレイジーキャッツ」(正式名は「ハナ肇とクレージーキャッツ」)のジャズピアノ担当の桜井センリさんがお亡くなりになった、というニュースが。

前回、桑名正博さんの追悼だったのに、今回は桜井センリさん(以下敬称略)…。昭和があまりにも急いで消えていく気がして、本当に寂しい、さびしい。寂し過ぎる。

クレイジーキャッツは「コミックバンド」なのだが、その一言で終わらせるのが勿体なさ過ぎる、独特な「格上」の存在感があった。「シャレの分かる超一流芸術家集団」……うーん、そんな堅苦しいものでもないか。

とにもかくにも、メンバー全員がスキャンダルとは無縁な人格者。普通なら芸能生活であらぬ色に染まってしまいがちな普遍性と品性を残したまま弾け続けた超カッコいいオッサンたちだった。

メンバーはハナ肇(ドラム)、植木等(歌・ギター)、谷啓(トロンボーン)、犬塚弘(ストリングベース)、安田伸(テナーサックス)、桜井センリ(ピアノ)。

もちろん、青島幸男の作詞が放つ、破壊力抜群のギャグやコントもすばらしいが、この人たち、楽器の演奏技術がものすごい。「笑い」の要素を無くし、演奏だけを聞いても、目をひんむいて仰天してしまうレベルだ。

舞台せましと歌い踊る姿とはまた違った「品」のある植木等のギター。ド迫力のガタイでドラムセットを自由自在に操るハナ肇。控えめでありながらセクシーに舞う安田伸のテナーサックスの音色。まるでピアノの鍵盤を扱うかのように、太いベースの弦を軽やかに弾き跳上げる犬塚弘のストリングベース。ホーンの部分を外しても流暢に音色を奏でるミラクルを披露する谷啓のトロンボーンの超絶技!

そして桜井センリ。その小柄な体を大きなグランドピアノに埋もらせながら、パワフルかつ繊細な音色を奏でていた。

スゴイ、スゴイよ全員!

クレイジーキャッツを見ていると、音楽と笑いのセンスはかなり共通しているのではないか、と思う。

音楽で培った(もしくは生まれ持った)抜群のリズム感と絶妙の間合いがノリツッコミにも存分に活かされて、ちょっとしたコントでも「聞いていて気持ちいい」のだ。

決して「無責任」ではなく、「力の抜き方」を知っている成熟したジェントルマン「クレイジーキャッツ」は永遠なのだ。高度成長期の日本を支えてきた彼らのユーモアと音楽は、まだまだ日本に必要である!

現在、メンバーの中でご存命なのは犬塚弘さんただ一人だが、「解散はしていない」そうなので、こうなったら100歳目指して長生きしてクレイジーキャッツの消滅を阻止してほしい。

今回の締めの一曲は、クレイジーキャッツが放った永遠の肯定ソング「スーダラ節」で。「わかっちゃいるけど、やめられない」!

また次回、お会いいたしましょう。田中稲でした。

【文=田中稲】

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