【GEAR'S VOICE Vol.21 PART1】の続き。
大名:マイムとの出会いの前に、たくさんのものとの出会いがあったんですね。
岡村:そうなんです。そして、ようやくマイムとの出会いがやって来ます(笑)。絵画の勉強をする中で、イタリアのフィレンツェに2か月ほど滞在する機会がありました。滞在していたところの近くには広場があって、よく散歩をしていたのですが、そこに大道芸人がいたんです。彼は、パントマイムの技術を使いながら通行人に色んないたずらをしていました。通行している車を止めてわざわざ車の前を歩行者に歩かせたり、通行人のかぶっているハットを拝借して勝手にパフォーマンスを始めたり、それこそ日本では絶対にできないようなことを平気でするんですよ(笑)。それがすごく衝撃的で、面白くて、いつも見に行っていました。そして、何なら自分もやってみたい、という気持ちが沸々と沸き上がってきたんです。
大名:ただ見て楽しむだけでなく、自分もやってみたい、というところまでいくのがすごいですね。それでマイムを始められた、と?
岡村:実はもう一つ大きなきっかけがあって、フィレンツェでの路上パフォーマンスを見た後にニューヨークで観た「ブルーマン」というノンバーバルパフォーマンスがこれまた衝撃的で、フィレンツェの彼とまさに同じようなことをしていたんです。それで、やっぱりこれだ!と。帰国してからすぐにマイム俳優のいいむろなおきさん(現在もギア出演中)に師事するようになりました。
大名:ギアとはどのようにして出会われたのですか?
岡村:いいむろさんの出演する舞台ということで、2010年の初演を観に行ったんです。観てすぐに「これに出たい!」と思いました。ギアには5つの異なるパートがあって、それぞれがそれぞれの役割を果たし、一つの物語を創りあげています。これは、それぞれが異なる楽器を使って一つの音楽を奏でるバンドとすごく似ているなと思ったんです。みんなでドラムを叩くのとは違う楽しさがそこにはあり、自分にこの舞台は向いている! と直感的に感じました。それで、「予定を全て空けて稽古に出るので参加させてください」と直談判し、メンバーに入れていただくことになりました。
大名:マイムという表現について、思うところを教えてください。
岡村:カバンが空中で止まっているように見せたり、壁のないところに壁があるように見せたりするのが代表的なマイムのパフォーマンスですが、僕は別にそれ自体は(悪い表現をすれば)さして重要なことではないと思っています。それは、そのパフォーマンスをないがしろにしているということでは決してなくて、あくまでも表現の土台であるということです。中途半端なパフォーマンスをしてしまうと、観客は幻滅するでしょう。でも、逆にパフォーマンスの技術が高ければ、前のめりになって観てくれます。技術の洗練によって、その前のめりの姿勢に誘導したいだけなんです。カバンが止まっているように見えることを伝えたいわけではなくて、それらのパフォーマンスを介して、自分の表現する世界を伝えたいんです。そして単純におもしろいと言ってもらいたいんです。少しでも多くの人に愛されたいという自己実現の欲求なのでしょう。これは、バンドや絵画に没頭していた頃から何も変わっていないですね。その表現手段が今の自分にとってマイムだということです。
大名:マイム俳優・岡村渉の今後の目標は?
岡村:もっともっと色んな経験を積んでいきたいです。色んな場所でのパフォーマンスにチャレンジしていきたいし、マイムを軸とした様々な身体表現にチャレンジしたいと思っています。
大名:最後に、座右の銘があれば教えてください。
岡村:「やりたいことをする!そのために、やらなければいけないことをする!」ですね。
大名:まさに今回のお話を凝縮した言葉ですね。今日はありがとうございました。
【ノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』とは?】
ブロードウェイの『ブルーマン』や韓国の『ナンタ』などで注目を集めた「ノンバーバルパフォーマンス」とは、言葉を全く使わない新しいタイプの舞台公演。『ギア-GEAR-』は、マイム、ブレイクダンス、マジック、ジャグリングの超絶パフォーマンスとプロジェクションマッピングなどのテクノロジーが融合した、日本発・日本初の非言語エンターテイメント。舞台は古びたおもちゃ工場。かつてその商品だった人形「ドール」が、作業を続ける人間型ロボット「ロボロイド」とふれ合い、感情を獲得し、人間に近づいていく感動の物語。2012年4月よりロングラン公演をスタートし、9月より新たにVer.2.00を上演! 大人から子どもまで、日本語がわからない外国の方でも楽しめる、70分100席限定の衝撃体験。