12月に入り、本格的に盛り上がってきた年末商戦。なかでも近年は、おせちを作る人より買う人が増えたせいか、デパートやネット通販などでおせちの予約注文が殺到しているという。ネット通販では、これまで、実店舗を持たない問屋などを中心に盛り上がってきたが、最近は実店舗を持つ料亭などが存在感を高めているよう。そのなかで売り上げを飛躍的に伸ばしている一つが、築地に店舗を構える「築地 いけす割烹 竹若」だ。
竹若が初めておせちを販売したのは7年前のこと。当時は店頭販売のみで50本を用意したが、すぐに完売。2年目は150本、3年目は200本と年々増え、昨年にはネット通販と併せて約1万2000本も販売したという。さらに、この1万2000本も11月で完売してしまい、最も売り上げを期待できる12月に販売することができなかったということから、今年は1万8000本を用意しているという。
何と言っても、料亭の強みは、店舗で日常的に腕を振るうプロの料理人の手によるおせちという安心感にあるようだ。竹若で総料理長を務める津野修一さんに聞いてみた。
「普段から築地市場へ通っているため、問屋さんとの結びつきが強く、一番脂ののった旬の素材を一番良い時期に仕入れ、その食材を冷凍保存して使うということが可能です。おせち料理には、このような強みを存分に生かしています」
竹若のおせちは、2年連続でテレビ番組「ぴったんこカンカン」で紹介された豪華海鮮おせち「宝船」(1万9800円)などが売れ筋。このほか、近年は単身世帯用の少量タイプのおせちも売り上げが伸びているのが特徴だ。
対して、デパートの年末商戦でも、おせちは主役的な存在。2011年8月に地階食品フロア「ほっぺタウン」が増床し、食品フロアが充実する大丸東京では、おせちの予約は11月末時点で前年比10%増という。
「特に東北大震災以来、絆を意識して孫から祖父母まで幅広い層が一緒に楽しめるよう、和洋折衷多彩な品目を用意したおせちの人気が高いようです。また、気軽に食べられるおせち弁当も好評で、帰省の車内用としてお買い求めのお客様もいます」(大丸松坂屋百貨店PR広報担当 宮川香織さん)。
総菜コーナーには、帰省中の新幹線車内で食べるためのおせち弁当(味の浜藤・3990円)まで登場するデパート。ネット通販と共におせちの傾向を見ると、自宅でおせちを作る家庭の減少、単身の高齢者や結婚しない若者など単身世帯の増加といった社会的な問題を背景に、家庭の味から老舗の味へとおせちは買って食べるものになりつつあるようだ。【東京ウォーカー】