【WEB連載】酒女倶楽部の日本酒レポート17本目~「舞美人 特別純米 無濾過生原酒」(美川酒造場)~

関西ウォーカー

寒さが本格化してきました。「ここってハワイじゃないの?」と思うくらい冬でもあったかい大阪が、極寒に包まれております。さぶい!しばれる!こごえてまう!でもこの寒さは、日本酒にとっては「天国」。なにしろ、雑菌がはびこらない気温の低い時期でなければ、醸すことができないデリケートなリカー=日本酒なんですもの。

日本酒って、蔵さんによってはもちろん、作る年によっても味が微妙に変わってくるものです。そして、毎年毎年、味が良くなっていく蔵さんを見るのは、酒女にとってこの上ない幸せです。

もとからおいしかったけど、先日「こ、これは!」というほどクリティカルヒットなお酒を繰り出してくださったのが、美川酒造場さん http://www.maibijin.com/。銘柄は「舞美人」。酒女倶楽部メンバーの美酒女さんが、年末、わたしに送ってくださったお酒です。実は、美川酒造場の女将さん自身も、酒女倶楽部のメンバーです。以前から「おいしいのを作る蔵さんだな」と思っていましたが、写真の一本「特別純米 無濾過生原酒」は、本当においしかった。香り、味わい、甘み、辛み、酸味、とにかく全部がバランス絶妙!栓を開けたあとも、味が壊れないんです。

美川酒造場さんは、お酒のしぼり方にとってもこだわっていらっしゃいます。その名も木槽しぼり。「何て読むの?」。はいっ!ご質問ありがとうございます。「きぶねしぼり」と読みます。槽というのは、昔ながらのお酒をしぼる設備。設備というと仰々しいですが、木でできた大きなバスタブみたいなところに、お酒を入れた袋をずらっと並べ、上から圧力をかけてしぼる、という、とってもシンプルなものです。

お酒をしぼるって、言ってみれば「ろ過」です。醸したばかりのお酒にはお米がまだ残っていて、これをきれいにろ過しないと、あの透明なお酒は出来上がりません。だけど、何週間もかけて、のんびりろ過を待つわけにはいきません。だから、お酒をできるだけ早くぎゅっとしぼれる設備を、多くの蔵さんがそろえています。

木槽しぼりは、しぼりの設備の中でも、時間のかかる、どちらかといえば非効率な設備です。よく使われている絞り機と比べると、3倍近い時間がかかると聞いたことがあります(それ以上かもしれない…)。なのに、わざわざこれを使うということは、「おいしいお酒を届けたい」という、蔵さんの心意気にほかならないのです。

丁寧に、時間をかけてしぼられたお酒は、雑味がありません。だから、長いこと味が壊れないのかも、と思っております。わたしたちって、お酒を飲むとき、蔵さんの心意気もまた、飲ませていただいているわけです。感動。。

もちろん、木槽しぼり以外のお酒には全部雑味がある、というわけではありません。だけど私は「昔ながら」を残してくれている蔵さんが、とっても好きです。ロマンを感じます。そのロマンに、酒女の心はこちょこちょとくすぐられるのです。

甘さ度★★★★☆ 辛さ度★★☆☆☆ 女性度★★★★☆ 男性度★☆☆☆☆ ◆合う料理:お鍋、おでん、天ぷら ◆このお酒を芸能人に例えると…さわやかさ、コク、熟度、演技の味、すべてをかねそろえた姐さん女優、ということで「高島礼子」さん! ※甘さ辛さ度、女性男性度、合う料理は、すべて高野の独断と偏見です。 【文・写真=酒女倶楽部・高野朋美】

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