テレビやラジオ、舞台などさまざまな分野で幅広く活動されている松尾貴史さん。昨年、大阪・福島にできたばかりの自身のカレー専門店「般°若(ぱんにゃ)」に新メニューができたと聞き、早速取材にうかがった! 取材場所はもちろん、「般°若(ぱんにゃ)」。繰り広げられるインタビューの内容には、カレーへの愛情がびっしり!
_松尾さんご自身がこちらのお店に立たれることはあるんですか?
松尾「そうですね、お店に立つというよりも普通に食べにきてますけど(笑)」
_今回は松尾さんのカレー専門店の取材なんですけれども、初対面ですので松尾さんご自身についてもいろいろと聞いてみたいなと…。テレビでの印象ではすごくクールな感じだったのですが、実際にお会いするとすごく柔和な方で(笑)。
松尾「あっ、そうですか(笑)。なんかね、名目では“ヒール”でやってますのでね(笑)。憎まれ役といいますか、嫌味な感じでね(笑)」
_アハハ。なぜその役まわりに?
松尾「なんででしょうね? 僕はメディアの隙間産業ですので、隙間を選んでいるうちに、そういう役まわりになっちゃってる感じですかね(笑)」
_空きがあったと(笑)。コメンテーターさんとして出演されておられるのをよくお見かけするので、松尾さんはコメンテーターさんだという認識が強かったです。
松尾「コメンテーターって職業じゃないですもんね。あれは、例えばドラマの中の悪役と同じように、番組内での『役割』ですからね。『パネラー』って職業もないですもんね。名刺のあたまに『パネラー』て書いてある人に会ったことないですし(笑)。『パネル貼ってんの?』みたいな(笑)」
_松尾さんが番組に出てらっしゃると、空間がピリリとしまってますよ。
松尾「しまってない、しまってない(笑)! ただ人相が悪いだけで(笑)」
_それにしても、自覚的にヒールに徹しておられると聞いてちょっと安心しました…。
松尾「…でも、徹してもいないんですよねえ。そんな覚悟もないんです。ただ隙間を探しているうちに、知らない間になんかそのへんに“居た”っていう(笑)。それは今更変えようがなくて、自分でも“どうしましょう”っていう。覚悟も設定もない立ち位置でして(笑)」
_「般°若(ぱんにゃ)」大阪店よりも先に、下北沢にも同じ店舗を1軒、あとは世田谷にBARも経営されておられて。
松尾「BARの方はね、春風亭昇太師匠、須田泰成さんらとの共同経営なんですよ。一円も儲かっていないんですけれども(笑)」
_手広くやってらっしゃるなあと…
松尾「確かに広いですけど、浅いですからねえ…。手広いけれども、薄いといいますか。広く深くやってると“偉いなあ”って思うけど、僕はそうじゃない(笑)」
_そういえば、YouTubeで「朝までなめてれば」をみましたけど、面白かったです(笑)。
松尾「あ、あれは深い方ですね。あれは、けっこう深くやらされました(笑)。楽しかったですよ。楽しければ、自然と深くいけるところもあるのかも知れないですけども(笑)。好きじゃないとだめですね、やっぱり。仕事は、ジャンルで“断らない”っていうのが自分のなかにありまして。だから、例えば通販番組が来たって僕、断らないですよ。ただ、“商品に対して素直に思った事を言わせていただきますが”って条件をつけているので…、こないですねえ、通販番組のオファー。」
_それは…こないでしょうねえ…。松尾さん“ほんとの感じ”をズバリ言ってしまわれるでしょうから…危険(笑)。“よく切れるカッターの宣伝”とか、危険(笑)。
松尾「『あれ?さっき切れにくい方の実演の時、包丁を前後させずにトマト押しつぶしてませんでした?』とか言っちゃいますねえ。」
_松尾さんは超リアリストというイメージです。
松尾「リアリストかも知れないですけど、縁起かつぎはやりますよ。例えばあのガネーシャ(お店のカウンターに飾られてあるインドの置物)なんかは、大分から買ってきたものなんです」
_何故、大分でガネーシャを(笑)。
松尾「たまたまロケ先の古道具屋でね(笑)。その値札がなんか微妙で“4”のあとのマルが、微妙に3つなのか4つなのかわからなかったのと、最初のマルが果たしてゼロなのかコンマなのかわからくて。それでお店の人に「すみません、これお幾らですか?」て聞いてみたら、「あ〜!!いやいや、その値段でなくていいです!いやいやいや!いいですいいです!」て言われて、「いくらか聞いただけなのに…」て(笑)。結局3300円で買ったんですが。
_微妙な値段ですね(笑)。
松尾「4万円だと思ったら3300円だった(笑)。それでTV番組のスタッフに協力して頂いて手持ちで飛行機に乗せたんですけど、牙が飛び出しているので『何ですかこれ』って不審がられたり。ガネーシャは、いわゆる招き猫みたいなもんですし、カレー屋だし、ちょうどいいかなって思って。」
_カレーがとってもお好きだということはわかるんですが、いざお店までオープンするというのは相当ですね?
松尾「ここに至るまでに何段階かありましてね。BARのほうで何か食べるものを出そうということになりまして、共同オーナー全員がカレー好きだったということもあって。それで山梨県に美味しいカレーを出す居酒屋さんがあって、そこのご主人に無理を言って何種類かのカレーを冷凍輸送していただいてるんです。そうこうしているあいだに仲間と試作するようになって、『こうやってみよう』『あれを入れてみよう』と試行錯誤を繰り返しているうちに『これは店に出せるぞ』という完成度のカレーが出来るようになりました(笑)。それでどこかに小さないい物件でもあったら、店をやってみたいねなんて話していたら、たまたま下北沢で空き物件が見つかりました。それが1号店です。」
_トントンと始まった感じですね。
松尾「そうそう。だから無理なく、好きな人がやんわり集まって始まった感じで。大阪の店も地道に盛り上げていこうって感じなので、すみませんけど『本気のスタッフ募集中!』て書いてもらっておいていいですか (笑)? 店長候補を。」
_「本気のスタッフ募集」と…。はい、わかりました(笑)!
※【その2】に続く
【取材・文=三好千夏】