京都で絶賛ロングラン公演中のノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』の連載コラム第33回目(隔週木曜日更新)。今回は、演出部の小林顕作さんのインタビューをお届けします。「みなさまこんにちは、『ギア-GEAR-』制作スタッフのゆうじです。5月も中旬に差し掛かり、『ギア-GEAR-』Ver.3.00も絶賛公演中です。新バージョンでは、世界からも評価されるダンスカンパニー、コンドルズの小林顕作さんが演出に本格参戦!というわけで、小林さんに今回の演出に対する想いなどを伺いました!」
ゆうじ:今日はよろしくお願いします。以前もインタビューをさせていただきましたが、この度、本格的に演出に参戦されるとのことで、また前回とは違ったお話を聞ければと思っています。これまでよりもさらに深く関わってみて、本作品に対してどのような印象を持たれていますか?
小林:この作品って、色んなジャンルのスペシャリストが集まってるじゃないですか?でも、マイムにしろ、マジックにしろ、ブレイクダンスにしろ、ジャグリングにしろ、それらは観に来る人がこれまでに見たことのある世界だと思うんです。もちろん子どもたちは初めて見るということは多いでしょうけど、大人にとってはある程度自分の認識の中にある世界と言うか、許容ができている世界なんですよね。
ゆうじ:確かにそうですね。生でとは言わないまでも、ほとんどの人がテレビなんかでは目にしたことのある世界。
小林:そこで、何を売りにするかということですけど、まずはそれらを一つの作品に集める、というところじゃないですか。でも、それだけでは弱い気がするんですね。じゃあこの作品の価値ってどこにあるのかと考えると、集まった人たちが何をするのか、という部分にあると思うんです。世界に向けて発信していくなら、シルク・ドゥ・ソレイユにどうやって勝つのか、ということ。何をもって、観たことのない世界に連れていくのか。「演劇でもない、サーカスでもない、ミュージカルでもない」というキャッチコピーは、一つの方向性として有用なものだと考えています。でも、それが結局何なのかはまだ完全には見えていない。この作品を続けていくことは、その答えを探していく旅のようなものなんだと思います。
ゆうじ:Ver.3.00にして、まだまだ未完成の作品ということですね。
小林:はい。でも今回の改訂で、前のバージョンより確実に面白くなっています。その上で、お客様が観に来て、どういうキャッチコピーを与えるのか。結局はそこですね。出演者や演出家が四の五の言っても、結局決めるのはお客さんですから。
ゆうじ:今後この作品がより発展していくための明確なヒントを挙げるなら?
小林:これから先、生き残っていくのは“チャーミングな人”だと思っています。
ゆうじ:チャーミング、ですか。
小林:なぜなら、ここは日本だし、これは日本でできた作品だからです。日本って、とても変わった国で、欧米と違ってすごく上手な人だけが勝ち残るわけではないんです。これしかできないとか、そういうチャーミングさがないとダメなんですよね。この作品で言えば、自分のできることをかなぐり捨ててまで、ストーリーを必死で表現しようとしていることのチャーミングさ。それが自分の分野の技術をも引き立てることになります。反作用が作用になる瞬間、それをお客さんに見せないといけない。
ゆうじ:それがこの作品にも可能であると?
小林:もちろんです。ギアのみんなにはできると思っているから、こういう演出をつけています。スペシャリティーに長けた人たちが本当にしょうもないシーンに全身全霊をかける。「なんでこんなシーンに一生懸命になってんの?笑」みたいな。それがギアという作品の一番の価値になる。それは絶対に間違っていないと思います。自分のパートで精一杯やることなんて、世界中見ても誰しもがやっていることですから。
ゆうじ:確かに言われてみればそうですよね。
小林:何かをするために人が集まり、自分の個を消してまで、力をあわせて押し出すべきテーゼを表現しようとすること。日本人はそれが一番上手にできる人種だと思うんです。
ゆうじ:自分の個を消してまで、ですか?
小林:そうです。でも、これだけ個性の強い出演者が集まっているから、どうしてもはみ出してしまう。でも、それに関しては安心してほしいんです。まわりに全力で合わせようと思った時に、どこか明らかに人と違う部分が出てくる。それが本当の個性なのだと思います。
ゆうじ:チャーミングさ、全員が全力で力を合わせて一つのテーマを表現しようとすること、そして個性。それが今後のギアの鍵になっていきそうですね。
小林:そうですね。ただ、現時点ではまだまだ。もっといけます。これから先、僕が蒔いた種をこんな風に育ててくれたんだ!って驚かせてくれるような作品になっていくことを楽しみにしています。
【ノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』とは?】
ブロードウェイの『ブルーマン』や韓国の『ナンタ』などで注目を集めた「ノンバーバルパフォーマンス」とは、言葉を全く使わない新しいタイプの舞台公演。『ギア-GEAR-』は、マイム、ブレイクダンス、マジック、ジャグリングの超絶パフォーマンスとプロジェクションマッピングなどのテクノロジーが融合した、日本発・日本初の非言語エンターテイメント。舞台は古びたおもちゃ工場。かつてその商品だった人形「ドール」が、作業を続ける人間型ロボット「ロボロイド」とふれ合い、感情を獲得し、人間に近づいていく感動の物語。
進化をし続ける本作品は、新バージョンとなるVer.3.00が絶賛公演中!大人から子どもまで、日本語がわからない外国の方でも楽しめる70分100席限定の衝撃体験を、ぜひ劇場で!