さて、過ぎし5月12日は母の日でしたね。ああいう「記念日」があると、「うーむ、どこの企業が始めた商売イベントなのだろうか」と勘繰ってしまう自分。いやはや、ヨゴれたもんだ…と痛感せずにはいられねぇです(泣)。真っ白な心でオカンにカーネーションを贈った若かりし私、カンバーック!!!
で、なぜもうかなり日が過ぎたのに思い出したように母ソング特集なのか。情報発信を生業とする職業は「流行の先取り」がお約束。そこを、あえて昔のイベントを掘り起し取り上げるというこの斬新さ。3月6日にお雛様飾るようなもんだぞ、すごいだろー! え? ネタに困って母の日にこじつけたんじゃないか? はっはっは。そこらへんは追及しないのがオトナの粋っちうもんだ!
と、まあ、悪あがきはこのくらいにして。とにもかくにも今回は「母」がテーマをゴリ押し。ところが探してみると、なぜか全体的にヘビーというか「一生の感謝を凝縮!」くらいに漂う重さ。
「会いてえよぅ、俺をもう一度優しく怒ってくれよ」
「苦労かけたよね。ごめんよ。本当にごめんよ!」
「あなたくれた命のよろこび」
ってな感じで、言われたオカンすら「ななななんかごたいそうなッ」と恐縮しそうな勢いの歌多し。
母親がなぜか国宝みたいになっちゃってるのが千昌夫の小芝居で始まる「味噌汁の詩」。
歌の言い分を超簡単に列記すると。
●母の味=味噌汁=故郷=心の宝
●パパママなんて呼び名はダメッ。日本人ならお父さん、お母さんと言いなさいッ!
●ポタージュだのなんだのという女はダメ。味噌汁の好きな女でなきゃダメッ!
●味噌汁はかあちゃん!
その他「寝るなら布団」「下着はふんどし」など完全にこだわりが飛び火し、ラストに
「かあちゃーーーん!!」
でキメるという。
日本文化礼賛のトップが「母ちゃんの作った味噌汁」なのでござんすね。うむー、まあ、ワカランでもない。味噌汁の重要性を語ったうえで、「味噌汁の具は何か」まで突き詰めないあたり、都道府県の風習、ヘタすりゃ雑煮の味にまで論争が拡大する事を考慮したらしく(ホントかい)、ここらヘンの抑え具合はさすが中山大三郎!!
さて、次の一曲は武田鉄矢の「コラッ鉄矢!」、いやさ違った「母に捧げるバラード」。
コレ、歌の4分の3がセリフだしー(号泣)。鉄矢に説教されてるような気分になるんだよぅ。しかも3番あたりで聞くのを中断すると、オカンの素晴らしさではなく、鉄矢の超情けない青春時代カミングアウトばかりが印象に残ってしまうという悲惨な目に。
ダラダラしてるとか「バカ息子」と噂されてるとか、乳バンドにパット入れた女(パットのなにが悪いッ)に騙されやすいとか家のタバコ屋のタバコを無断で拝借するとか包茎だとか(ひいぃぃ)。
うああああ、そんな情報いらん。いらんぞッ、鉄矢! ラストのおっかさんのセリフが肝なので、皆さん、絶対最後まで聞きましょう…。
この「母に捧げるバラード」、歌詞を話し口調そのままで、BGMに乗せて披露するという手法は「港のヨーコヨコハマヨコスカ」と同じ。うーむ、そういう点ではある意味ハードボイルド…なのかぃ?
3曲目にご紹介するのはグレープの「無縁坂」。とほほ、凄いのを後に持ってきちゃったわ。
子どもが年老いた母を見て「運がいいとか悪いとか、お母さんを見てると“あるある”って思うわ~。耐え忍ぶ人生だよねー」とシミジミするという……。
つまり子どもよ。「お母さんは運が悪い人だ」と思ってますねッ!!それは心で思うだけにしときなっ。「苦労がたえないね」「忍耐の人生だよね」なんて、人に指摘されたくない最たる部分やんかい~! しかもそれを実の子どもに言われた日にゃアンタ(泣)。
ということで。もっとこう、明るくて軽くてノリノリな「母親サンバ」とか「オッカサン齢食ってブギ」とかが欲しいッ。「オカンはいつもミステリー♪」とか叫んでブンチャカブンチャカ踊れるヤツ。泣き所とか一切無いヤツ! 「カーネーションを喰ってみて」とか「マミーズランナウェイ」(ああもう自分で書いていてワケがわからないッ)とか攻撃的なロックはいかがッ。誰か一緒に作りませんか。前衛母ソング!
さて、今回の締めは、ある意味超前衛な母親ソング、森進一の「おふくろさん」で。これを歌っている時の進一は何かが憑いている。霊界と通信している。間違いないッ。「おふくろさん」と聞いて、川内康範氏の耳毛しか思い浮かばないという方は十中八九平成生まれ……。
では、また次回お会いいたしましょう。田中稲でした。
【文=田中稲】