劇団猫のホテルの劇作家・千葉雅子と劇団MONOの劇作家・土田英生。現代演劇において、キャリアのある二人がタッグを組み、長く上演されるレパートリーを創作する試みを始めた。役者のみでアクションを起こす例は今までにもあったが、劇作家同士が作・演出はもちろん“役者として”共演というのは珍しいかもしれない。そもそも、この二人芝居事業のきっかけは何だったのだろうか?
「下北沢で飲んでいた時に、千葉さんに『怖い役とか似合うと思いますよー』と言われて、『相手役、やってくれるならやりますよ』と言ったことから始まりました」と土田が明かす。その千葉の印象は「腰が低いけど、わりとずぶといはず(笑)、と思って。今回の作品も、表向きはぺこぺこしている姐さんだけど、という流れです。千葉さんの魅力を意識して作品を仕上げました」。
舞台は、かつて暴力団組織の組長の妻だった女と鉄砲玉だった男が逃亡、隠れて生活して早20年。姉さん女房である女は50歳を過ぎてもスナックで働き、少し年下の男はヒモのようになっている。そんな二人の日常に、暴力団と警察の追っ手が迫る、というストーリーだ。土田自身はヒモタイプ?「違います。(作品の中に)20代の自分を多少投影した部分はありますが。今は“包容力”がありますから(笑)」と、お茶目な部分も見せる。
再会して、土田の魅力がまた発見できたという千葉は、「キュートでむちゃくちゃ可愛らしい方です。土田さんの本はリズムや音の響きを守っていかないとと思って、とても集中力が必要とされてます。彼の芝居作りのチームプレーの魅力に気付づかされますね。この年齢で良い体験ができました。一言一句守ってセリフを言っていきたいです」。
見どころについては、「土田作品の、男と女のこじれた関係の普遍性を哀切的に描いた世界ですね」。さらに「20年以上、劇団を率いてきた者が勝負をつけている感じ、ひりひり感を舞台で感じ取っていただければ」とコメントする千葉同様、土田も「劇団をやってきた者同士、シンパシーがあります。二人の関係性を見てほしいです」と、お互いに座長らしいコメントを。本作「姐さん女房の裏切り」は6月12日(水)まで、小竹向原駅のサイスタジオ コモネAにて上演中だ。【東京ウォーカー】