【その1】の続き
―僕はずっと2007年からずっとライブも観させてもらい、取材もしているので特に良い意味で何も深く感じてないんですね。ただ、そんなに詳しく知らない周りの人からしたら自分たちで全て運営していて軌道に乗っているバンドだと思われているんですよ。そういう人たちからしたら、次はどう動くんだろうと気になっているみたいですよ。
マツキ「はいはい…、あんまりね何も戦略的な事はないんだよね(笑)。せいぜい次のツアーの時は、会場を大きくしますかぐらいで。大きな目標を掲げすぎても、予定通りにいくことって少ないし。でも先々のライブなどスケジュールは決めないといけないし、だからバランスですよね。その時その時で、今これがいいじゃないかって事を選べるかですよ。この先、僕らが上手くいくかもわからないし。常に危機感を持ってやっていますよ。僕らは、何の実感もないんですけどね。必死にやっているだけだから。何も成し遂げた気もないし。何とかやっているだけですよ(笑)」
―(笑)。シュウさんはいかがですか?
コヤマ「アルバムに関しては、さっきリーダーも言ったように、そういう話だったから。例えばさ、2013年春出す予定でも曲ができなかったら、それでいいというか。また、来年出せばいいわけだし。あくまで、目安っつうかさ。戦略とかじゃないし。俺たちが一番やりたい事はさ、俺たちの本当にやりたい事をやりたいようにやるのが目標でさ。実現したい夢は、それでしかないんですよ。やりたい事がやりたいようにやれるなら、例えばさ、バイトしてもいいわけだし。でも、色々考えてやるとバンドだけ1本でかっこいい音楽をかっこよく鳴らしたい…、そうなるとこうなるっていうだけで。それだけなんだよな。戦略とかないんだよ。あれば、逆にいいんだけど。それで上手くいくなら、いくらでもやるけど、そんな事じゃないんだよ。リーダーがかっこいい曲を作ってきたら、かっこよく鳴らしたいわけ。それだけだから、それ以外は頭回らないっつうかさ。この5年は、それだけをひたすらやっていたというか。唯一やりたい事…、最初で最後の目標はそれだけだしね。これからも延々やるだけかな。何かを成し遂げるという意味が、あまりピンとこないというか。大きなハコでやったからって、それは成し遂げたわけじゃなくて、やる事のひとつにしか過ぎないと思うんだよ。成し遂げるっていうのは、かっこいい音楽をやるっていうだけなんだよね。そしたら満足するし、上手くいくと思うんだよ」
マツキ「いわゆる目に見えてわかりやすい計画は、今のところないからね」
―悪気なく武道館やメジャー再進出という目に見えてわかりやすい形が、SCOOBIEにもあるのかなって勝手に期待する人もいると思うんです。別に、それは悪い事じゃないですけど、僕は今回のアルバムを聴いたら、それだけで今のSCOOBIEの凄みがわかると思うんですよ。
マツキ「ここ2作あたりからバンドでやる歌もの路線を突き詰めてみようというモードがあって、『MIRACLES』までやってきたんですよ。変な言い方だけど、そのへんでその方向性は止めた方が良いかなって思ったんだよね。去年1年でいうと休みなしでライブをやってきて、色んな企画のライブもやったんだよ。ルーツをたどる選曲のワンマンとかね。そこで気付いたのは、昔のソウルやブルースってシンプルなんだよ。演奏するだけで、テンション上がるしね。自分なりのアレンジもしやすいんだよ。そういう感覚を久しぶりに思い出して。今回ってさロックンロールアルバムではあるけど、わりと中盤以降は歌ものも出てくるし、ちゃんと『MIRACLES』を踏襲した作品であるとも思うんだ。それにシンプルにドンって鳴らせる音楽の方が、中村(宗一郎)さん(ゆらゆら帝国などでもお馴染みのエンジニアで、SCOOBIEとは2008年からタッグを組んでいる)が録るのが得意だろうって思って。ダビング作業を繰り返すスタジオワークで楽曲を彩るのは、大体こんな感じになるのかなっていうのは『MIRACLES』でわかったし。『せーの!』で一発録りする前提で曲を作っていたわけじゃないけど、結果『せーの!』で一発録りする事になって良かったかなって。凄い良いアルバムだと思うよ(笑)」
※【その3】に続く
【取材・文=鈴木淳史】