【WEB連載】田中稲の仮想DJ「昭和歌謡エンドレスリピート」 29曲目「追悼 藤圭子」

関西ウォーカー

現役でステージに立ち、ブルージーなメロディに歌声を乗せる彼女の姿は、なんというか、肌の色が陶器のように白く、髪の毛は絹糸のようにサラッサラで黒く。瞳も漆黒の中にキランと光が浮かんでいて、日本人形みたいに美しい……!

 そうなんですよ。藤圭子はモノトーン。色に甘えない、見ているこちらが背筋が伸びるほどの「凛とした、白と黒の調和した世界」を醸し出す人だった。時には手をかざさなければ眩しくて目が開けられないほどの光の中。時には灯りひとつない闇の中。

「キレイやなぁ」思わず呟かずにはいられない。「息を飲んで聞き入る」という表現が本当に合うアーティスト、藤圭子。

そして、そこから繰り出される、空気を震わせる感じの低く掠れた力強い声よ!

自分の押し殺していた寂しさとかをブワッと思い出させるような。ポジティブかネガティブかといえば、完全にネガティブなのだけど、人が忘れようと無理に蓋をしてしまって、逆にくすぶってしまった部分を放出させてくれる、そして一緒に泣いてくれる、そんな稀有な声だと思うなあ。

命を絶った原因とかそれに至るまでの経緯とかゴシップ抜きにして、まずは「圭子の夢は夜ひらく」を聞いて頂きたい! (名曲中の名曲ですよねッ)。この「夢は夜ひらく」、いろんな人が歌ってますが、藤圭子バージョンがやはり絶品。そして、「せつないよ」の連呼が本当に胸を打つ「面影平野」女の可愛さと業を余すところなく表現した「女のブルース」この三曲は必聴……!胸のあたりをグアーッと掻き混ぜられます。いろんな感情を呼び起こす才能。妙に前を向く本当に本当にもっと歌ってほしかったです。

また次回お会いいたしましょう。田中稲でした。

【文=田中稲】

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