ストリートファッションやエクストリーム系スポーツを愛する国内外の若者たちの間で流行の兆しを見せているけん玉。発売中の「東京ウォーカー」で取り上げただけでなく、情報番組「ZIP!」(日本テレビ)、「朝ズバッ!」(TBS)をはじめとする各メディアがこぞって特集を組むなど、ブームはかなりの広がりを見せ始めている。なぜ、今けん玉が熱いのか? 海外から逆輸入される形となったこのブームの起源を探ってみた。
ことの発端は、アメリカのプロスキーヤーが来日したことによる。日本人のスキーヤーが暇つぶしに興じていたけん玉に注目した彼らは、木製かつ独特のフォルムを持つけん玉を日本ならではの玩具としてお土産に持ち帰った。それがアメリカのストリートにKendamaとして伝わったのだが、日本古来の遊び方を知っている人物はほとんどいなかった。そこで、自分たちなりのやり方で数々のプレイを生み出していった。世界で最もストリートカルチャーが多用化し、“フリースタイル”を愛するアメリカだからこそ、とんでもない発想の技やデザインが生み出されることになったようだ。
取材に応じてくれた原宿のショップ「DECADE TOKYO」の河本伸明氏は、「アメリカ人が創作したプレイはスタイリッシュな動画としてYou Tubeにアップされていきました。ブームが世界中に広がっていったのは、動画サイトがある現代ならではのことですね。単に技を魅せるだけではなく、映像や音楽などの演出も含めて独自の“スタイル”を発信できたことも、けん玉ブーム拡大の大きな要因だと思われます。比較的安価なうえに特別な施設や広いスペースも必要としないため、世界中のどんな地域でも流行する可能性を秘めています」と分析する。
けん玉=日本古来の玩具―と思われがちだが、実は世界中に似たような玩具は存在していた。グラスと毛糸玉、動物の骨と穴のあいた木製玉などを糸で結び、一方の上に乗せたり刺したりする玩具だ。その中で、16世紀のフランスで広く愛された「ビルボケ」というものが日本のけん玉のモデルだと言われている。
一般社団法人グローバルけん玉ネットワークGLOKEN(Global Kendama Network)代表の窪田保氏は、「今は海外ブランド製のけん玉の人気が高いのですが、日本の各メーカーが作るけん玉には伝統技術が生かされたクオリティーの高いものが多く、やはり一目置かれています。海外のけん玉プレイヤーも、現在のけん玉の原型を作った日本を“聖地”としてリスペクトしてくれています。GLOKENでは、今年7月に『GLOKEN CUP』というイベントを開催しました。海外プレイヤーを招いた交流会だったのですが、けん玉を始めたばかりの若い女性も多く参加してくれたんですよ。彼女たちはネットで動画を見て各プレイヤーのファンになったという方々。さすがにその状況には驚きました」とブームのすそ野が広がっている現状を話してくれた。
河本氏が取締役を務める「DECADE TOKYO」はストリートファッションやアイテムを扱うショップだが、11月22日(金)から24日(日)まで、千葉PARCOにて日本初のけん玉専門ショップ「DECADE KENDAMA STORE」をオープン(その後は順次全国展開予定)。また、GLOKENでは、2003年から2007年にかけてイワタ木工で製造されていた『夢元』に改良を加えた『夢元無双』を一般販売。こちらは公式サイト上ですでに完売しているが、11月15日(金)には「WISM渋谷」にて記念イベントを開催。「夢元無双」の追加販売ほか、コリン・サンダーをはじめとする、人気けん玉ブランドKendama USAやKROMのプロプレイヤー6名も集結する予定だ。
2014年には国内外で各種イベントが企画されている。まずは動画サイトやイベントでプロの妙技を堪能し、実際にけん玉を手にしていただきたい。【取材・文/大小田真】