ファンタジスタといっても一時、六本木界隈の夜を盛り上げたグループの一員ではない。コーヒーに魔法をかけることのできる人という意味から、コーヒーの専門知識を持ったハイレベルなサービスが提供できる人材を育成するために作られた、ローソン独自の資格制度のこと。資格所有者は現在全国に505名、クルー全体のたった0.3%だという。合格率は16%と非常に狭き門だ。
なぜこのような資格制度を導入したかというと、今後ローソンは高品質な商品の提供だけでなく、ホスピタリティ溢れる接客を行うことによって全体の売上を伸ばすという構想を持っているからだ。年々高齢化の進む顧客層の厳しい要望に対応するには、対面での細やかなサービスが必要であると判断したのだ。ファンタジスタ制度を導入してから、実際に有資格者の販売員がいる店舗では売上が1.5から2倍異なるという。
千葉県の店舗に勤務し、ファンタジスタの資格を持つ石川さんは、この資格をとってから私生活まで一変したという。子育ても終え、平日毎朝6時から15時まで勤務し、新しい物事にチャレンジする自信も無かった石川さん。資格取得を目指したきっかけは、「できることを増やした方が人生楽しくなるよ」という娘さんの一言だった。資格試験の一ヶ月前から問題集を始め、ローソン主催の勉強会に参加し、見事難関を突破した。客にコーヒーを提供する時は、コーヒーについて学んだ知識を元に一言添えるなど、ファンタジスタに恥じない接客を心がけているという。様々なことに興味も沸いて、新しい趣味に没頭する毎日へと変わったそうだ。この資格制度は確かにクルーのモチベーションとともに、接客サービスの向上へ一役買っているようだ。
ファンタジスタのいる店舗には店頭にオリジナルマークが付く予定。カフェメニューのラインナップの充実と、ハイレベルな味の提供だけに収まらず、心から安らげる空間を提供するというコンビニの新たな立ち位置は世間にどう受け入れられるのか。ローソンの今後の成長を見守りたい。【東京ウォーカー】