【2013年を振り返る】漫画業界の動向をオトナファミ編集長に直撃!<後編>

東京ウォーカー(全国版)

<前編より続く>

――前編では「進撃の巨人」「坂本ですが?」のヒットの理由を教えていただきましたが、この他にも「コレ読んで!漫画ランキングBEST50」から読み取れるトレンドがあれば教えてください。

「第1位に選ばれている『ワンパンマン』もそうなんですけど、2013年はWeb漫画の躍進が目についた一年でしたね。この分野で最初に軌道に乗ったのはガンガンONLINEで、連載作品の中からはアニメ化されるタイトルも出てきました。そしてそれに続く形で、となりのヤングジャンプや、裏サンデーといったコミック配信サイトも勢いに乗ってきた感があります」

――各出版社がWebでのコミック配信に力を入れている理由は何でしょうか?

「やはり一番の理由は、コストパフォーマンスが高く、斬新なアイデアや実験性の強い企画を次々に発信できるところでしょうね。作家陣も様々で、商業誌で描かれている漫画家さんもいれば、Webでプロ顔負けの個人創作を掲載している同人作家や、編集部が育てていきたい新人などもいる。そういった人材をたくさん発掘し、発表の場を提供するだけでなく、アクセス数などからユーザーのニーズもダイレクトに確認できるようになっているところが、出版社側としても非常に便利だったんですね。そこで人気の出た作品を単行本化すれば、確実な売上が期待できるわけです。実際に発行部数が100万部を超えるタイトルもちらほら出始めていて、『ワンパンマン』もミリオンセラーを記録しています」

――具体的に『ワンパンマン』はどういったところがウケたのでしょう?

「もともとは、ONEさんという作家さんが投稿サイトに連載していたWeb漫画で、それを『アイシールド21』の村田雄介先生がリメイクし、となりのヤングジャンプで連載することになった作品です。原作は緩いタッチの絵柄が特徴的なんですけど、リメイク版は村田先生の画力が素晴らしく本当に格好良い絵柄になっていて、しかもその画力の高さがギャグを際立てるという、少年漫画好きなら間違いなくハマれる構造なんです。一方、物語展開に関しては、ONE先生の原作の面白さや仕掛けをそのまま残してあるので、寝る前に読んで、楽しい気分に浸りたいというOL層の要望にもぴったり当てはまる作品なんですね」

――ランキングの上位には、これらの他にも「七つの大罪」や「亜人」など男性向けの作品がランクインしていますが、少女漫画の分野では何か新しい展開はありましたか?

「第7位に『ときめきトゥナイト 真壁俊の事情』がランクインしているのですが、この作品は1982年から1994年にかけて、りぼんで連載された人気漫画の続編で、タイトルからも分かるとおり、ヒロイン蘭世の恋の相手である真壁俊が主人公になっています。ここで面白いのが、物語が原作の後日談ではなく、作中でキーとなったエピソードを真壁君の視点から描いている、というところです。『あのセリフを言った時、真壁君は何を考えていたのか?』『あのシーンの直前まで、彼は何をしていたのか?』など、リアルタイムで読んでいた世代には気になるエピソードが満載なので、是非読んでいただきたいですね。こういった形で、往年の名作がファンに最も喜ばれる形で復活するというのも、2014年辺りにはトレンドになっているかもしれませんね」

――漫画雑誌の展開にも面白い動きがありましたね。

「マーガレットでは『ベルサイユの薔薇』の新作が掲載され、Cocohanaでは『ママレード・ボーイ』の続編が始まったのですが、どちらも掲載号には、原作コミックス第1巻の復刻版が付録として付いてきました。ファンとしては、まさかの新作が読めるというのが大きなプレゼントだし、原作を未読の人も、第1巻が付いてくるので読んでみようという気になる。この合わせ技がウケて、どちらの雑誌も発売するや、あっという間に完売してしまいました」

――それでは最後に、2014年期待の漫画や作家について、ご意見を聞かせてください。

「『さよならソルシエ』が完結したばかりの穂積先生、『累』の松浦だるま先生、『MAMA』の売野機子先生など、今後注目の作家さんはたくさんいます。それと作品でいうなら、三部けい先生の『僕だけがいない街』も気になるところですね。この方は『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦先生の元でアシスタントをされていたことがあり、作品もサスペンスタッチでテンポも良くて面白いんですよ。2014年の夏には弊誌で、以前『進撃の巨人』などを選出した、2年に1度の恒例企画“NEXTブレイク漫画ランキング(第5回)”を発表するので、これら注目の作家、作品がランクインしてきてくれると嬉しいですね」

今回のインタビューのベースとなったランキングは、オトナファミ2014年2月号(発売中・定価 690円)に掲載されている。より詳細なデータやここで紹介した作品以外のランキングも充実しているので、是非併せてチェックしてもらいたい。【取材・文/田井成樹】

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