スタジオジブリの初ミュージカル作品を関西で上演する。秋田県を拠点にオリジナルミュージカルを制作し、全国で巡演している劇団わらび座の舞台。ミュージカル「おもひでぽろぽろ」は2011年に初演し、2012年より全国ツアーへ。2011年のわらび座東京公演には、元宝塚歌劇団の男役トップスター、朝海ひかるがタエ子役で主演、タエ子の母・山形のばっちゃの2役で杜けあきも出演した。今回はそのツアーファイナルとして大阪に初登場し、東京で再演。
物語は1982年の夏。ある日、27歳のOL・タエ子の前に小学校5年生の自分が現れる。夏休みを利用し、タエ子は“ワタシ”を連れて山形の田舎へ旅に出る…。
映画と同じストーリーが、ミュージカルの舞台としてよみがえる。朝海ひかるに作品への思いを聞いた。
Q:この作品に出演しようと決めたのは?
「私、仙台出身で、山形が舞台のお話ですし、秋田を本拠地としているわらび座さんがやる、ということで、なんか今、東北に呼ばれてるなっていう感じがしまして。もうほんとに、ふたつ返事で受けさせて頂いたんです。秋田でお稽古の始まるちょっと前に東日本大震災がありまして、あぁこれはもう偶然ではなくて、必然的にこのお芝居をやる運命にあったんだなぁっていうふうに思って。受けさせて頂いた時とは思いもよらない方向に転換してしまったんですけども、よりこの作品を大事に作って行こうと思いました。東日本大震災があった後にこの作品をやらせて頂いたのは、自分にとってとても必要なことだったんだなと、今とてもそう思っています」
Q:やってみてどうでしたか?
「とてものびのびとやらせて頂いたんですけれど、毎日毎日、心が洗われて行くみたいでした。自然は大切なものとか、そういうことはみなさん思っていらっしゃると思うんですけども、もっと身近にというか、自分の深層心理の方に働きかけて来るような感じがして、もっともっと自然が好きになりましたし、田舎が好きになりました。都会で仕事をしていますけれども、時間があるとどこか地方に行ったり、旅行に行って短い時間かもしれないですけれど、息を吸ったり、散策したりするだけで充電できたり。前よりもそういう時間がほしくなりましたし、増えましたね。だから前の東京公演の最中から、ぜひ再演やりたいよねって、杜(けあき)さんとふたりで話していたんです」
Q:映画は見ましたか? 舞台化ってどうなるんでしょう?
「私はジブリのアニメが好きなので、もちろん拝見していました。私はジブリファンで、『風の谷のナウシカ』が一番好きなんですけれど、宮崎駿アニメ全部、高畑勲さんの作品も全部見てます。『アルプスの少女ハイジ』も『コナン』も見てます(笑)。だから私も、これ、どういうふうに舞台にするんだろうと思っていたんですね。で、稽古していくうちに毎回毎回、あ、ここの場面こういうことになるんだ、あぁ、なるほどって。高校2年生の子が演じた子供時代のタエコちゃんと私が一緒に話すとか、アニメとはまた違う場面を作ったり、栗山(民也)さんの演出がすごくおもしろくて。セットはほとんどないんですけれども、観客の人たちの想像力をすごく掻き立てるような演出なんです。それから、あ!ジブリっぽい!!って思う場面がいっぱいあります(笑)。まさにアニメと同じ場面っていうところも。稽古しながら、うまいなぁって感心していました。ジブリを好きな人だからこそわかる、演出どころっていうのが絶対あると思うんですよ。だから、ジブリファンは倍楽しめると思う。私のすっごく好きな場面も、大体ジブリっぽい場面が多いですね」
Q:ここを観てほしいシーン、楽しかったシーンは?
「タエコが山形に行って、地元の方たちと初めて会話する場面です。そこでお客さんも一気に、タエコと同じ目線で、うわぁ田舎に来たなっていうのをすごく感じると思います。またあそこが観れるんだなと思うとすごくわくわくしますね。それから、わらび座さんの人たちが踊るお祭のお囃子の場面がすごく幻想的。とてもカッコイイんですけど、踊ってる人たちがだんだん怖く見えて来る。そこは、自分の気持ちと葛藤しているタエコの心理と重なっているんです。今思い返すと、そこがすごく素敵だなぁと思います」
Q:タエコを朝海さんが演じるなら、踊るシーンもある?
「あります。ワンシーン作って頂きました。ベニバナ摘みを手伝う場面で、モンペをはいて踊ります。朝日が昇って、ベニバナの花たちがキラキラ光ってる中をタエコが幸せそうに踊るんです。とても幻想的に作られていて、出来た時は、あぁこんなふうに舞台になって行くんだって感動しました」
※【その2】に続く
【取材・文=ドルフィンコミュニケーション】