テレビCMでも話題となり、全世界で8億ダウンロードを突破した「iPod touch/iPhone」向けゲームを配信する「App Store」。現在、3月にコナミの看板タイトル「メタルギア」シリーズの最新作「METAL GEAR SOLID TOUCH」(コナミ、900円)がPS3版からの移植タイトルとして配信を開始し、ゲーム業界では話題になっているという。
全世界で2650万本以上を売り上げる絶大な人気を誇る「メタルギア」シリーズの最新作を、「App Store」上で配信することは、いったいゲーム業界にどのような影響があるのだろうか? ゲーム情報誌「週刊ファミ通」(エンターブレイン)の編集長・加藤克明さんに話を伺った。
「『メタルギア』シリーズの生みの親・小島秀夫さん(コナミデジタルエンタテイメント専務)は、業界ではマリオの生みの親・宮本茂さん(任天堂専務)と並び海外からの評価が高い人です。独自の作家性が認められ、奥の深い作品を製作する“世界の小島監督”が、『iPod touch/iPhone』をゲームのハードとして認めたことは、ゲームファンのみならずクリエイターにも大きな影響を与えるでしょう」。
いうなれば、“村上春樹が最新作をケータイ小説で発表する”くらいの衝撃。世界有数のゲームクリエイターが、内容を軽視されがちな「iPod touch/iPhone」に主力ゲームを配信するという事実は、日本のみならず世界中のゲーム産業にも影響を与えるエポックメイキングな出来事なのだ。
「3/19には新作発表会も行われました。新作ゲームの発表会は、メーカーが多大な売り上げを見込んだ作品でしか開くことはありません。この点からもコナミと小島監督の本気度がわかります」。
その意気込み通り、無料アプリから100円のお手軽アプリまで揃う「App Store」内では、3/28現在でランキングBEST5入りと奮闘中。先週まではランキング1位をとるなど、いまだ注目の的だ。
「本格的なゲームを900円という安さで配信することも、ゲーム販売における一つの尺度になる可能性があります。コアなファン層はもちろん、ライトなユーザー層も取り込もうというのがコナミの狙いです。“大人のエンターテイメント”として評価される作品の主人公・スネークのカッコいい生き様を多くの人に伝えてもらいたいですね」。
カートリッジやパッケージなどの値段が省かれることから実現した低価格。「iPod touch/Phone」向けタイトルに力を注ぐ方針を出したスクウェア・エニックスなどの大手メーカーにも、今後の指標として影響を与える可能性を持つ。
ゲーム機「iPod touch」とケータイ端末「iPhone」というそれぞれ異なるユーザー層に向けてゲーム配信することで、より広い支持が見込める点も「App Store」向けタイトルの魅力だ。「メタルギア」というビッグタイトルの「App Store」への参戦が、今後どのようなゲームタイトルの呼び水となるのか。期待して待とう!【東京ウォーカー/中道圭吾】