※【その1】の続き
Q:宙乗りは?
するみたいですね。高所恐怖症ではないですけど、飛んだことありませんから。東京の記者会見で、右近さんがおっしゃってたのがすごくおもしろくて。「歌舞伎では、キツネで空飛ぶ、馬が空飛ぶ、のはあるけど、人間が飛ぶのはなかなか難しいです」。何を言ってはる?と(笑)。馬やキツネが飛ぶ動機はあっても、人間が空を飛ぶ動機を作るのはすごく大変なことだって。う~ん、まぁ大変やなぁと思いましたけどね。馬とキツネの気持ちはさておき、ボクが飛びたい、宙を舞うぐらいの気持ちにならなアカンのですからね。
Q:貴重な経験ができますね。
歌舞伎の舞台は立ちたいって言って立てるもんじゃないですからね。大学の演劇サークルから始めて、関西小劇場にいて、まさか歌舞伎の舞台に立たせていただくとは。名前は歌舞伎っぽいですけどね。昔から、東京へ行った時に、京都出身です、はい蔵之介ですって言ったら、「歌舞伎関係の人?」みたいなことは言われてたんですけど(笑)。歌舞伎を生で体感できるのはうれしいです。ボク、笑也さんや春猿さんや女方の方と芝居をするのも初めてです。笑也さんとラブシーンみたいなのもあるみたい?でね。男同士のラブみたいなものはやったことありますし、男女もあるんですけど。今回は男同士だけど、この役は女性なんですよ。この差はデカイ。こないだ篠井英介さんと共演させていただきましたけど、英介さんは男が女を演じている役をされてましたし。女方さんと芝居するって…すぐ慣れると思うんですけど、稽古場ではメイクしないよと言ってはって。ま、そらそやろなぁと思いながら(笑)。そういうのは楽しいですよ(笑)。
Q:期待するところは?
アウェー感? まず稽古場が、どんな稽古場かわからないんですよ。で、どう居たらいいのかなって。ただ、稽古は歌舞伎やから浴衣かなと思ったら、スーパー歌舞伎はジャージと靴なんですって。それ聞いただけでも、あぁ~良かったって。まず、そんなところですよ、ボク。すごいことでしょ。一個ずつ、楽しみをこれから見つけて行くと思うんです。一個ずつホッとしてることでもありますね(笑)。ギリギリ頑張る、んじゃなくて、楽しもうとは思ってます。舞台で、あぁ~楽しいってやってる舞台なんて、あぁ~楽チンなんて思ってる初日なんて絶対ないわけですから。絶対どの舞台でももがき苦しむ、でもこんな機会はないですから。
Q:白塗りの扮装写真、カッコイイですよ。
自分だと認識できません、今でも。こんな顔、見慣れないから。だから、オレ、白塗ってるで、笑えるな、とか思って楽しもうと思ってます(笑)。
Q:挑戦ですね。
挑戦なんですけど…猿之助さんの襲名の時、大変だったと思います。自分が今どういるか、今後どうあるべきなのか、この先歌舞伎界の中で、何を為していくのか、いろんなことを考えてるんでしょうね。その中でボクみたいなこの素材でもなんかの一助になれば、と。だから、ボクはそこに自分の身は捧げる感じかな、と。自分がどうっていうことじゃなく、この作品にボクの何かが微力でもなれば、と思ってますけどね。でも実際は、ボクが支えてもらったり助けてもらったりすることが多いと思いますけど、何とか務め上げたいなと思います。猿翁さんがスーパー歌舞伎をやってきたからこそ、今、セカンドができるんだって。2番目ではなくて、セカンド、違うステージに行くんだって、猿之助さんは考えてる。このスーパー歌舞伎セカンド、相当なプレッシャーの中で、すごい思いでやってはるんだから、それにボクがなんかできればなぁと。彼は、登山は登るだけではなくて山を下山するまでだって言ってました。確かにこれ、新橋演舞場の初日が開いたじゃなくて、大阪の松竹座の千穐楽まで、ちゃんと務め上げることだと思ってます。
Q:猿之助さんの魅力は?
やっぱり彼の舞台に対する思いの強さですかね。これをやるって決めて、常に行動して行く。だから『狭き門に入れ』っていう作品の時も、彼自身がボクの携帯に電話掛けて来ましたからね。そういう思いを次々行動にしていっているんでしょうね。だから、今回こういうふうに声を掛けてもらったんだから、それにボクは少しでも力になる分、ほんとに身を捧げたいと思ってます。46歳になって、こんなことさせてもらう、ドキドキして、ヤベェ、しんど、キツイわ、でもオモロイ!と思いながらやるのはいいですよ。やっぱり挑戦すること、知らんことに向かっていくのは、いいんじゃないかな、と。
Q:大阪のみんなは蔵之介さんを応援しますよ。
ありがとうございます。一応ボク関西、ホームなんでね。「蔵之介が松竹座に立ってるわ~!」「白塗ってるわ~」って思って観てください。歌舞伎をまだ観たことない方も、構えなくて観に来ていただけたらいいかと思います。難しい伝統芸能を観るんじゃなくてね。ボクが出るんやから。構えんと観に来てほしいなと。
Q:“大向こう”さんが呼ぶ屋号は? 猿之助さんは「澤瀉(おもだか)屋!」ですけど。
掛け声かける名前ね。それをどうするねん、って。実家が佐々木酒造やからって、「酒屋!」はそのままやし(笑)。そういうとこからも考えたりしてるんです、大変ですよ、やることがいろいろあって(笑)。だから、是非、観にいらしてください。
【取材・文=ドルフィンコミュニケーション】