アメリカの南北戦争に起源をもつ、伝統的なドラム・コーをショーアップしたエンターテインメント「ブラスト!」。金管楽器、打楽器、ビジュアル・アンサンブル(ダンサー)の3つのパートで構成される同集団は、2003年に日本初上陸を果たし、現在までに本国以上の人気を博するエンターテインメントに成長した。2012年に史上初となる47都道府県ツアーを決行した彼らが、今年の秋に再び帰ってくる!
現在、「ブラスト!」には日本人3人が所属する。パーカッションの石川 直、ダンサーの和田拓也、トランペットの米所裕夢だ。世界をまたにかけて活躍する3人に、いまの熱い思いを聞いた。
――初めて見る方に向けて、「ブラスト!」の紹介からお願いいたします。
米所「ブラストのショーは、演奏形態が吹奏楽やオーケストラとは違います。動きながら演奏するマーチングバンドの形態をベースに、視覚的なアートの面も盛り込んだ欲張りなショーなんです」
石川「言葉を短くまとめるのであれば、音楽のサーカス。そしてホームパーティです。見てもらう作品としてのショーではなく、キャストとお客様が一緒に楽しめる、みんなで作り上げるお祭りにしたいと常々思っています」
――「ブラスト!」の公演の楽しみの一つに、休憩時間のロビーパフォーマンスがあります。
石川「そうですね、休憩も休憩じゃありません(笑)。だけど、実に有意義な時間を過ごさせていただいています。普通ならキャストとお客様は、同じ空間にいながら見えない境界線がどうしてもありますよね。すぐ近くにいるけど、違う世界。お客様から舞台を見るとそう感じるものですが、ブラストはそれを取っ払いたいんです。それが、メンバーが客席に入って行ったり、休憩中のロビーに乱入して演奏したりすることにつながっています。みんなでお祭り騒ぎですよね。特にロビーでのパフォーマンスは、演奏を終えたばかりの僕らと、見終えたお客さんのアツアツの状態でコミュニケーションを取ることができる、ほかのショーにはない貴重な時間です。やはり、見た直後が一番フレッシュなリアクションだと思うので、それを聞けるのは有難いことですね」
――すごいエネルギーですね。普段は、どれくらいトレーニングをされているのでしょう。
和田「朝9時にけいこ場に行って、夜の10時まで練習。それを週に6~7回繰り返します」
――日本人のお客さんは、海外と比べてやはりシャイなのでは?
石川「いやー、それがまったくシャイではないですよ(笑)。2003年に、日本で初日の初公演を渋谷で行いまして、その時のステージマネージャーがアメリカ人だったんです。日本人はその時僕一人だけだったんですけど、彼がキャスト全員集めて話を始めて。『日本人のお客様はアメリカと違って少し大人しい。でも、それはショーを見て楽しんでいないわけではなく、ひしひしと感じてくださっているんだ。だから、リアクションが小さくても気を落とさず、いつもどおり楽しく演奏してくれ』と。僕もその話を聞いて、そりゃあやっぱり、ブロードウェーの盛り上がり方とは違うよなと思っていたんです。けど、いざショーが始まるアナウンスが入った途端、会場がまるでロックバンドのコンサートでも見に来たような大騒ぎになって。『なんだこれは! 全然話が違うじゃん!』ってとまどいましたよ(笑)。ボレロ風のサンバがトラックで流れて、その音がフェードアウトしてくるころに照明も全部落ちて本番のボレロが始まるんですね。そのトラックが聞こえないくらいの歓声でしたから、一旦待つはめになるくらい(笑)。なので、まったくシャイではありません! 日本のお客様とブラストの相性は最高。アメリカでもこんなに続いていないですからね」
――世界を舞台に活躍される皆さんの、今後の目標を教えてください。
和田「長生きをすること! 以上です(笑)」
石川「じゃあ、僕は早起きを…」
和田「こらこら(笑)。すみません、プレイヤーとして長生きするということです。僕はダンサーという役回りなので、身体的にどこまでのびのびとタフにできるか考えていて。20代前半の時の感覚といまとでは、明らかに自分の体に対する感覚は違う。今年32なので、ターニングポイントですよね。これが年をとるということかと思うこともあるけど、逆に体のケアに向き合えるようになった。60歳になっても『あの人切れ味あるね』って言われるくらい、向上していきたいです」
石川「僕は、バチを操る極意を極めたい。空が飛べるようになるくらい! なのでまずは宙に浮くことからスタートしたい。…っていうのはもちろん冗談ですけど(笑)、より宇宙の真理、物理の法則、そういうものを極めて、物理的な面での限度を人が想像する遥か先にもっていきたいという思いでいます」
米所「中学校から吹奏楽をやっていたんですけど、将来なにになりたいとか特に考えていたわけではなくて、ただ好きだからやってて。でも、できなかったことができるようになり、そういう段階を何個も重ねていくと、自分が想像してない話がくるようになるものですよね。なのでいまは、2014年のジャパンツアーで毎回ベスト賞を自分なりに出ることが目標。そうすれば、千秋楽が終わるころには、その先に自分にとってプラスになることがきっとあるはずだと思っています」
――九州滞在中に楽しみにしていることはありますか?
和田「ラーメン…(ぼそり)」
石川「そう、食はまず間違いないですね。あとはなにより、人との出会いでしょう。ショーが終わって、飲みに行って、そこでローカルの方々と出会って。みんなで盛り上がって、楽しい時間を過ごして、それを持ち帰ることがすごく楽しみ。もちろん、どんなお客様と出会えるかにもワクワクしていますよ。一緒に最高の時間を過ごしましょう!」