家庭教師のサリヴァン先生と三重苦の少女、ヘレンの絆を描く傑作戯曲「奇跡の人」は、1959年のアン・バンクロフトの初演以来、世界中で名立たる女優たちによって演じられてきた。5年前にその名舞台でヘレン役を演じた高畑充希が、今年10月に再びヘレンを演じる。彼女以外のすべてのキャストとスタッフが一新された舞台に。
「デビューした時からやりたいと言い続けて実現したヘレン役でしたが、5年前は(高校生時代で)若さもあったし、勢いでした。どんな稽古だったかを何も覚えていないくらい無我夢中で。でも今回は私以外の全員が一新されているので、以前のように頼りっぱなしという訳にもいかない。むしろ周囲から少しでも頼られる存在にならなきゃいけないと思っています」と高畑は語る。
今回の演出は、2014年読売演劇大賞最優秀演出家賞や芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞している演劇界の新星、森新太郎。演出が変われば舞台は大きく変わる。高畑の期待と意気込みはどうなのだろうか。「まだ稽古は始まっていないですが、楽しみですね。森さんのお芝居は(彼が手掛けた)『ビッグ・フェラー』や『ゴドーを待ちながら』を見てステキだなと思っていましたから。前回は演出家の鈴木裕美さんとガッツリ組ませていただきましたが、今回の森さん演出でそれとは全然別の方向からこの舞台を見ることができるんじゃないかな」
今回の大事なカウンターパートナー、サリヴァン先生役は木南晴夏。舞台上で壮絶にぶつかり合う場面もあるが。
「木南さんと伺ったとき、意外!と思いました。いつか共演できるなら福田雄一作品とかかなと(笑)。ひっぱたいたり殴り飛ばされたりの取っ組み合いの場面では、初演の時は鈴木杏さんとはすごく考えて。痛くないように殴りつつ痛いように見せたりするのに苦労しました。今回、木南さんが(私に)頼ってると言ってくださっているので頑張らなきゃ。どんな場面になるか楽しみですね」
まだ「奇跡の人」を見たことがない人にも前回の舞台を見た人にも、10月を期待してほしいという高畑。「『奇跡の人』での細かい演出に対して悩んだりすることは、俳優としてひとつの大きな糧になる気がします。これは私にとって日本で一番好きな戯曲で一番やりたい芝居。ヘレン役を続投するのは日本で私が初めてらしく、身が引き締まる思い。生まれ変わった『奇跡の人』を見てください」【東京ウォーカー】