Bunkamura・ザ・ミュージアムでは、8月9日(土)から10月5日(日)まで、「Bunkamura25周年特別企画だまし絵2」を開催する。
2009年に開催した「だまし絵」展の続編となる本展では、多岐に渡り進化していく現代美術の展開に重きを置き、古典的傑作を集めたプロローグに続き、現代の新しい「だまし絵」における挑戦を、視覚的詐術によるカテゴリーに分類して紹介していく。
「プロローグ」では、人間の視覚に対する科学的探求が始まったルネサンス後期のヨーロッパ、視覚の力に挑戦するような様々な作品が登場。ある絵の中に別の像を潜ませるダブル・イメージの傑作と言われるアルチンボルドの「司書」など、古典的巨匠たちが技巧をつくしただまし絵の到達点を示す作例は、眼の先入観を打ち破り、観る者を仮象の世界の裏側へと誘っていく。
「トロンプ・ルイユ」は、精密な描写で、実物そっくりに見せかけるだまし絵。日常目にするモチーフを本物そっくりに再現するカズ・オオシロは、床に無造作に置かれたアンプは表面だけが精巧に描かれたもので、後ろに回るとそれが木枠に貼られたカンバスと分かる趣向となっている。
「シャドウ、シルエット&ミラーイメージ」は、影や鏡を、物体を本物らしく見せるためのいわば引き立て役として取り入れ、虚構空間と現実世界を巧妙に結びつけるモチーフとして用いたもの。福田繁雄の「アンダーグランド・ピアノ」では、床に置かれた得体の知れない黒い物体が、鏡像の中ではじめて正しいかたちとして浮かび上がる。
1960年代半ば頃、「オプ・アート」と総称される、幾何学的なかたちや色のシステマティックな配置によって錯視効果を引き起こす抽象絵画が注目を集めた。パトリック・ヒューズの「リヴァースペクティヴ」(リヴァースとパースペクティヴの合成語)と呼ばれるシリーズは、描かれた情景の遠近と画面の物理的な凹凸とを逆転させることで、見る者が左右に動くにつれてイメージが動き出すように見えるという仕掛けになっている。
遠近法の技法を逆利用してイメージを法則的に歪め、一定の視点から見ることで正像を浮かび上がらせる「アナモルフォーズ」の手法。エヴァン・ペニーは、極端に引き伸ばしたり、傾斜させたりして歪めた人体を彫刻で制作。今回展示される高さ3mを超える彫刻作品は会場で見上げることで正像を結ぶ仕掛けとなっている。一方、距離や見方を変えることでひとつのイメージを別のイメージへと変貌させるのが「メタモルフォーズ」の手法で、見慣れた個々の事象が通常とは異なる空間や形で存在することで現実にはあり得ない情景を生みだしたり、イメージ自体が目の前で変容していくような錯覚を見る者に引き起こさせる。
CGなどが多用されビックリすることが少なくなった現代。アートを目の前で見ることで驚きを体験してみては。【東京ウォーカー】