_今回、初のベストアルバムということですが、いわゆる『総集編』とは少し違った雰囲気ですね。
Hikaru/私たちは活動して6年半になるのですが、まだKalafinaを知らない人に私たちの事を知って頂きたいという思いのもと、今回のベストアルバムを出すに至りました。選曲に関しては、これまでの総楽曲数が約80曲程あり、やはりすべての曲を入れるとうわけにはいかないので、あらゆるテイストの曲を2枚にまとめました。どちらのアルバムから聴いてくださっても「Kalafinaの色」というものが見える作品になっていると思います。
_「Red」と「Blue」と分かれていますが、それぞれどのようなコンセプトなんですか?
Keiko/私たちの音楽は本当に色々なジャンルとテイストが混在していて、自分たちでも「Kalafinaはこういうジャンルです」という提示が難しかったんです。そこで、今回はベストを作るにあたって、選曲のコンセプトは一緒ですが、時系列や楽曲の性質で分けるのではなく、私たちの楽曲全体の幅や世界観の広さを色で表現しました。「情熱的でエネルギーの象徴といえる」赤、「癒やしや人々を引きつける要素を持つ」青だと思い、「Red」「Blue」と表現しました。今回のベストは何かの節目という意味ではなく「ここまできたぞ!」って旗を立てるくらいの感じですね(笑)。「まだ走り続けている」という気持ちとして、新曲も入れさせていただいてます。
_制作作業を通して、これまでを振り返る要素も多いにあったかと思うのですが、現時点で客観的にKalafinaというアーティストはどう見えていますか?
Wakana/Kalafinaの楽曲に関して言えば、どれもやはりKalafinaの色があって、軸がブレていないという印象ですね。これだけ色々なテイストの楽曲を並べて聴いても、やっぱり「これがKalafinaの音楽」という芯がしっかり出来ているというか。3ヴォーカルというスタイルでやってきていますが、それぞれがそれぞれの役割をしっかりと認識できてきて、中でも「もっとここを伸ばそう」とか「ここが足りない」といったような高い意識で楽曲に向き合えるようになっていますし、各ヴォーカルの存在感をよりしっかりと感じるようになりました。昔はコーラスワークというのは2声のハーモニーだったりソロパートが多かったりもしたんですけど、最近の楽曲に近づくにつれて、3声のハーモニーが増えてきたりという変化も改めて見えましたね。そうやって、楽曲に対する私たちの役割は少しずつ変化してはいるものの、梶浦さん(プロデューサー)が作られる楽曲の世界観や軸となっている部分は少しもブレずにいるなと感じます。
Keiko/こうやってこれまでの楽曲を並べてみると、本当にタイアップ曲が多いということに自分たちでも驚きましたね。劇場版「空の境界」主題歌プロジェクトとして私たちは結成されたのですが、昨年この作品が終わるまでずっと楽曲の部分で関わらせていただきました。「魔法少女まどか☆マギカ」も、オリジナルアニメにしてすごく人気が出たアニメーションですし、作品の発展と共に私たちの音楽も関わることが出来ているという部分では、作品との距離感がとても近い状態で活動できたというのはすごく嬉しいことですし、ありがたいことですね。それぞれの作品から私たちが生まれて、今があるという実感にも繋がって。
Hikaru/私も、ふたりが感じていることと同じ気持ちですね。実は最初、ベストアルバムを出すということについては少し不安があって(笑)。「まだ早いよ」とか思われるんじゃないかとか、いろいろ考えてしまって。でも、私たちとしては、今回のベストはいわゆる「総集編」でなく、「名刺代わり」としてたくさんの方にお薦めできるものに仕上げることが出来たと思っています。ベストが出ることによって、Kalafinaを知らない方にも「まずはこれを聴いてみて!」みたいな感じで、気軽な入口となる作品になれたら嬉しいですね。自分自身にとってこのベストアルバムは、これまでの活動や自分自身のことについて振り返る良いきっかけにもなりました。初期の頃の楽曲も入っているので、まだ未熟だった自分もそこにはしっかりといますので(笑)。
_タイアップとしてみなさんとの関係も深い日本のアニメーションも、世界に誇る代表的なカルチャーとして浸透していますよね。
Keiko/いまはアニメーションと言っても、いわゆる「子供たちだけが観るもの」ということではなく、映像のクオリティも高く繊細な感性と技術を持ったアーティストさんたちが作り上げる世界観は、大人の方も楽しめる本当に素晴らしいものばかりですよね。プロデューサーである梶浦さんはそういった作品の劇伴も数多く手掛けられているのですが、私たちも劇中歌に歌詞をつけたものを歌わせていただいたり、そういった関わり合いもあって、自分たちの楽曲はアニメーションというジャンルとすごく密接な関係であると思います。「あそこのシーンで流れてた曲だよね」とか、アニメとリンクして世界観を広げてくださるのは本当に嬉しいですね。
_ライブも、アニメ関連からロックフェスまで、かなりジャンルレスにステージを重ねてらっしゃいますよね。
Keiko/そうなんです(笑)。ライブは、やはり新たなお客様と出会える場所なので、色々なイベントや音楽フェスからお声をかけていただけるのは本当に嬉しいです。最初は、やはりロックイベントとなると、どうしても「アウェイ」な感じがして弱気になっていたんです。「ここに来ているお客さんに自分たちの世界観が受け入れてもらえるのだろうか…」とか。でも楽曲が多くなるのと同時に、自分たちの色や世界観もしっかりと確立されてきましたし、敢えてアウェイな空間を自分たちの色に染めていくことが出来るか、という挑戦が楽しみになってきました。
※【その2】に続く
【取材・文=三好千夏】